更新日:2025年1月30日
ビフィズス菌とは?摂取するメリットや乳酸菌との違い、効率的な増やし方を解説
監修:内藤 裕二 先生(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授/一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長/日本潰瘍学会理事長/日本酸化ストレス学会副理事長)
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ビフィズス菌と聞くと、お腹に良いというイメージを持つ方が多いはず。事実、ビフィズス菌は善玉菌の一種であり、腸内環境に良い影響をもたらしてくれます。ただ、ビフィズス菌がどうして腸に良いのか、どうすればビフィズス菌を増やせるのかなどについて、ご存じでしょうか。ここでは、「そもそもビフィズス菌って何?」という疑問に対する答えから、ビフィズス菌と並んでよく知られている乳酸菌との違い、効率的なビフィズス菌の増やし方などを解説します。
ビフィズス菌とは
腸内細菌とビフィズス菌
・ビフィズス菌は大腸に最も多く棲む善玉菌
人の腸内には、約1,000種類、100兆個の腸内細菌が棲みついていて、それらの細菌の集まりは「腸内フローラ」または「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と呼ばれています。
腸内フローラは、「善玉菌(有用菌)」(※以下、善玉菌)、「悪玉菌(有害菌)」(※以下、悪玉菌)、またこれら2つのうちどちらにも属さず善玉菌か悪玉菌のどちらかが優勢になると、優勢になった方と同じ働きをすることのある「日和見(ひよりみ)菌」の3つで構成されています。
ビフィズス菌と乳酸菌はどちらも善玉菌に該当する腸内細菌としてよく知られています。両者の違いについては後で詳しく解説していきますが、大腸に棲んでいる善玉菌は大半がビフィズス菌と考えられています。
・ビフィズス菌の種類
ビフィズス菌は、さまざまな生物の腸内や発酵食品に生息している細菌で、今でも研究によって次々に新たなビフィズス菌が見つかってきています。現在までに確認されたビフィズス菌は約100種類。その中で人の大腸から検出されるのは約10種類で、さらにそれらのうち食品に利用されているのは4種類ほどです。例えば、B.longum、B.breve、B.bifidum、B.lactisという名前の細菌です。
これらの細菌の種類を表す「菌種」がさらに細分化されたものを「菌株」といいます。菌株とは、1つの細菌から分裂増殖した菌の集まりのことです。同じ菌種に属する異なる菌株は、菌種としての共通の特徴や性質を持つ一方で、人に与える効果などの性質は菌株ごとに異なります。
・日本人のお腹にはビフィズス菌が多い!?
腸内フローラには、人種差があることがわかっています。日本人の腸内フローラは、ビフィズス菌の占有率が10%程度で、この割合は欧米人よりも高い傾向にあるといわれています。この違いの理由の全容は明らかにはなっていませんが、1つの可能性として、日本人は小腸での乳糖(母乳や牛乳に含まれる糖質)の分解・吸収機能が弱いために、乳糖が大腸まで届きやすく、それがビフィズス菌のエサになっているのではないかと考えられています。
腸内フローラは乳幼児期(生後直後から6歳まで)でほとんど形成されるといわれていますが、乳児期(生後1ヵ月から1歳まで)には、母乳に含まれている難消化性オリゴ糖を利用してビフィズス菌が増加すると考えられています。そのため、人工乳で育てられている乳児はビフィズス菌が少ないことが古くから知られています。
・ビフィズス菌の占有率は加齢とともに低下する
乳幼児期には、腸内細菌の多くをビフィズス菌が占めていますが、その占有率は成長とともに低下していきます。成人でのビフィズス菌の占有率は、日本人では2~25%という広い範囲に分布していて、平均は前述のとおり10%程度です。ただし、0%の人もまれではないようです。
善玉菌であるビフィズス菌が、なぜ加齢とともに減ってしまうのでしょうか。現在、加齢によって腸内フローラの組成が変化する理由としては、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)機能の低下、消化液(胃酸や胆汁酸)の分泌量の低下、免疫機能の低下などの影響によるものではないかと考えられています。
一方、100歳以上の「百寿者」はビフィズス菌占有率が高いともいわれており、健康のためには、加齢に伴うビフィズス菌の減少をできるだけ抑えたほうが良い可能性があると理解されています。
ビフィズス菌を摂るメリット
・整腸作用を発揮する
ビフィズス菌は、主に大腸に生息している腸内細菌です。食べた物のほとんどは大腸に到達するまでの間に消化・吸収されていますが、人の消化酵素では消化されない難消化性の糖やでんぷん(オリゴ糖やレジスタントスターチなど)を含む食物繊維※は、吸収されずに大腸まで到達します。大腸に生息しているビフィズス菌などの腸内細菌は、これをエサとして生存しています。
※食品中に含まれる食物繊維の測定法としては近年「AOAC2011.25法」が用いられており、従来の「プロスキー変法」とは異なり、難消化性の糖やでんぷんも食物繊維として測定されている。本記事ではAOAC2011.25法を基に解説していく。
ビフィズス菌は、大腸まで消化・吸収されずに到達したオリゴ糖などを含む食物繊維を発酵させて、エネルギー源として利用します。その過程で、乳酸や短鎖脂肪酸である酢酸という酸を産生し、大腸の中を弱酸性の状態にします。すると、悪玉菌は酸に弱いため、悪玉菌が増殖しにくい環境が作られ、腸内フローラのバランスが整えられます。このようにして、ビフィズス菌の整腸作用が発揮されます。
・免疫機能を高めるように働く
ビフィズス菌がオリゴ糖などを発酵させて、エネルギーを利用する過程で発生する短鎖脂肪酸や乳酸は、腸内を弱酸性にするだけでなく、腸の免疫の活性や、腸の粘膜のバリア機能を高めるようにも働くことが知られています。つまり、ウイルスや細菌に対して抵抗する力を強めてくれる可能性があります。
・研究で示されているその他の有用な働き
これらの他にも、ビフィズス菌は腸管の中で、ビタミンB群、葉酸、ビタミンKの産生にかかわっています。また、整腸作用や免疫機能の維持・向上以外に、肥満や糖尿病のリスクを抑制したり、脂質代謝を改善(コレステロールや中性脂肪を低下)したり、認知機能を改善するような作用もあることが知られています。
ビフィズス菌と乳酸菌の違い
ビフィズス菌とともに、善玉菌の代表的な存在としてよく知られている乳酸菌。どちらも人の腸内に棲みついている細菌ですが、以下のような違いがあります。
<ビフィズス菌と乳酸菌の違い>
ビフィズス菌 | 乳酸菌 | |
---|---|---|
生息できる環境 | 酸素が少ない環境でしか生息できない | 酸素がある場所でもない場所でも生息できる |
棲みつく場所・食品 | 人や動物の腸内、および一部の発酵食品 | 空気中、土壌、および動物の腸内、乳製品や発酵食品など、広い範囲に生息 |
人の体内での分布 | ほぼ大腸に限られる | 小腸や母乳の中 |
産生するもの | 乳酸・酢酸 | 乳酸 |
・酸素がある場所で生息できる/できないの違い
両者の大きな違いの1つは、乳酸菌は酸素がある環境でも生息できるのに対し、ビフィズス菌はそれが難しいという点です。
乳酸菌は、人や動物の腸内以外の環境だけでなく、例えば土壌(土の中)や空気中などの自然界に広く存在しています。一方、ビフィズス菌は人や動物の腸内、とくに人では酸素が多い小腸ではなく、酸素の少ない大腸に生息し、それ以外では一部の発酵食品の中など、存在できる場所が限られています。
・酢酸を作る/作らないの違い
乳酸菌もビフィズス菌も、大腸まで消化・吸収されずにたどり着いた食物繊維などを発酵させることでエネルギーを得て、生息しています。その過程で、どちらの細菌でもエネルギーを産生する過程で乳酸が産生されますが、ビフィズス菌による発酵では、乳酸だけではなく、酢酸も産生されます。
酢酸とは、つまり「お酢」です。お酢は「体に良い」と言われますが、口から飲んだお酢は大半が胃や小腸までで吸収されてしまい大腸には届かないため、大腸を介した健康効果を得ることは難しいのです。しかし、ビフィズス菌が大腸にいることで、大腸でもお酢である酢酸が産生され、それによる健康効果を期待できるようになります。上述のビフィズス菌による健康上のさまざまなメリットは、大腸における酢酸の産生が大きく関係していると考えられています。
ビフィズス菌の効率的な増やし方
ビフィズス菌そのものを摂取する
ビフィズス菌を増やす方法の1つとしては、ビフィズス菌そのものを摂取することです。ただし上述のように、ビフィズス菌は酸素が苦手な菌であるため、自然界の食品にはほとんど存在していません。
ビフィズス菌が存在し得る食品は、「発酵」という手が加えられた食品で、例えばヨーグルトやチーズ、味噌などです。とはいえ、それらの食品すべてがビフィズス菌を含んでいるとは限らず、含んでいないものもあります。特にヨーグルトにはビフィズス菌が入っていると思われている方も多いかもしれませんが、実はビフィズス菌が入ったものはそれほど多くありません。通常、ビフィズス菌入りの食品は特定保健用食品や機能性表示食品として流通しており、「ビフィズス菌入り」などと表示されています。なお、発酵とは食品に微生物が加わり変化することで、主に糖を分解する過程を指します。この発酵はあまり酸素のない環境で進むため、酸素が苦手なビフィズス菌でもかかわることができます。発酵と並んで「腐敗」も食品に微生物が加わって生じる変化ですが、両者の違いとしては、人の健康にとってプラスの変化が発酵、有害な変化が腐敗と呼ばれています。
ビフィズス菌のエサとなる食べ物を摂取する
自然界の食品にはビフィズス菌がほとんど含まれていませんが、大腸にはビフィズス菌がたくさん生息しています。大腸の中のビフィズス菌は、大腸まで消化・吸収されずに届く食物繊維などをエサとしています。
そこで、ビフィズス菌のエサとなるそれらの栄養素が含まれている食品を食べることが、大腸のビフィズス菌を間接的に増やすように働くと考えられます。食物繊維を多く含む食品の例としては、精製度の低いごはん(白米ではなく玄米に近い米)など。また、食物繊維に含まれる難消化性でんぷん(レジスタントスターチなど)も、ビフィズス菌のエサとなります。レジスタントスターチを多く含む食品の例は、冷やご飯(炊いてから冷ました状態のご飯)などが挙げられます。
ビフィズス菌を増やす糖化菌を摂取する
ブドウ糖などの単糖は、腸内細菌の助けを借りずに吸収し利用することができます。しかし、単糖が組み合わさっている多糖の状態にあるでんぷんは、そのままでは吸収できず、消化酵素によって単糖にする必要があります。その消化酵素の1つである「アミラーゼ」を産生する腸内細菌を「糖化菌」といいます。この糖化菌も善玉菌の1つです。
糖化菌は、腸内で乳酸菌やビフィズス菌を増やすように働きます。それだけでなく、それらの善玉菌はそれぞれが単独でいるときよりも、組み合わさっているときのほうが、各段に速く増殖するといわれています。このような糖化菌の特徴を利用して、ビフィズス菌を増やすことができます。
例えば「麹菌」は糖化菌の1つで、麹菌を使って作られる味噌や醤油、漬物、日本酒、焼酎などには糖化菌が含まれています。また、納豆菌も糖化菌の一種とされていて、大豆を納豆菌で発酵させた納豆も、腸内でのビフィズス菌の増殖をサポートすると考えられています。
他にも、糖化菌が含まれているサプリメントや整腸剤を利用するという方法も手軽にできるためおすすめです。

ビフィズス菌が減りやすくなる状態を避ける
食物繊維などを摂取してビフィズス菌を増やすことと並んで大切なことは、腸内のビフィズス菌が減らないようにすることです。ビフィズス菌は、栄養バランスの偏りや薬の副作用、ストレス、睡眠不足、運動不足などによって減ってしまう可能性が知られています。1つずつ解説していきます。
・栄養バランスの偏り
例えば、脂質やタンパク質、添加物が多くて、食物繊維が少ないという食事が、ビフィズス菌にとってマイナスに働いてしまうと考えられています。また、ビフィズス菌を増やすための食べ物を摂取することも大切ですが、全体的な栄養バランスを意識しながら摂るようにすることで、腸内のビフィズス菌を減らさないことも大切です。
・薬の副作用
腸内フローラに影響を及ぼす薬としては、内服の抗菌薬(抗生物質)がよく知られています。抗菌薬は細菌を殺したり、細菌の発育を抑えるための薬ですが、その細菌には腸内細菌も含まれます。つまり、抗菌薬をのむ必要がないときにのんだり、のみ過ぎたりしてしまうと、腸内フローラにも悪い作用が起きてしまうことがあるのです。ただし、抗菌薬は感染症の治療のために処方される薬ですので、処方された際には指示どおりにのむ必要があります。抗菌薬の服用時に下痢などの症状が現れやすい人は、医師に相談して整腸剤もあわせて処方してもらうなどの対策をすると良いでしょう。
・ストレス
ストレスがお腹の具合に関係していることは、医学的には「脳腸相関」と呼ばれています。メンタルの不調が腸の活動に影響を与え、反対に腸の状態がメンタルに影響を与えることがあるといわれており、「腸は第二の脳」とも呼ばれます。
さらに近年はその関連の多くに腸内細菌が関与していることが明らかになってきており、「腸内フローラ-腸管-脳軸」という双方向の流れが精力的に研究されています。
・睡眠不足
睡眠の質が良くなかったり、睡眠時間が短すぎたりすると、心身の健康にさまざまな悪影響を及ぼすことがわかってきています。その影響の1つとして、睡眠不足と腸内フローラのバランスの乱れとの関係も報告されています。善玉菌を増やすためにも、毎日規則正しく、質の良い睡眠を十分にとるようにしよう。
・運動不足
適度な運動を行うと、腸内で善玉菌が増えるという報告があります。運動不足の状態が続いていると、腸内フローラのバランスが乱れ、腸内環境に悪影響が及んでしまう可能性も。少し息が上がる程度の早足で歩くなど、適度な運動を日頃から行ったり、ランニングやサイクリングといった有酸素運動を週に3回程度行ったりすると良いといわれています。
ビフィズス菌を上手に摂取して健やかな毎日に!
ビフィズス菌は、腸内環境に良い影響を与える善玉菌の1つです。ビフィズス菌を摂取することで腸内環境の改善が期待できますが、ビフィズス菌を含む自然界の食品には限りがあります。そのため、ビフィズス菌のエサとなる食物繊維などを含む食べ物を摂取したり、ビフィズス菌を増やす糖化菌を配合した整腸剤を活用したりするのも良い方法でしょう。ビフィズス菌の効率的な増やし方を知った上で、基本となる生活習慣の見直しも積極的に行い、腸内環境を整えましょう。
- [参考文献]
-
- ・羊土社「すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢」,2021,内藤裕二/著
- ・大阪府内科医会会誌31(2),2023「ビフィズス菌の新展開」
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