更新日:2024年7月29日
デトックスとは?腸との関係やデトックスの方法についても紹介
監修:内藤 裕二 先生(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授/一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長/日本潰瘍学会理事長/日本酸化ストレス学会理事長)
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デトックスとは、私たちの体に入り込んだ有害物質(毒素)や、体内での代謝の過程で生じた老廃物を排出することを意味します。デトックスにはさまざまな方法が挙げられますが、なかには腸や腸内細菌との関わりがある方法もあるといわれています。しかし具体的な関わり方や、デトックスが本当に有害物質や老廃物の排出を促すのかどうかについては、あまりよく知られていないかもしれません。そこで今回は、デトックスと関係のある作用やデトックスの方法、腸との関係について詳しく紹介します。
デトックスとは
デトックス(detox)は英語の「detoxification」の略語であり、「否定」を意味する「de」と、「毒の」を意味する「toxicus」に由来します。
体外から入り込んだ有害物質や、体内での代謝の過程で生じた老廃物を、食事や施術など何らかの方法で取り除き、健康を促進する方法の一つとして海外で提唱されました。日本でも、主に民間療法の場で話題にされることがあります。
デトックスの一般的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
- ・食事療法
- ・運動療法
- ・サプリメントの使用
- ・排便
- ・入浴・サウナ
- ・アロマテラピー
他にも、アルコールやカフェインなど、特定の物質や成分を一定期間断つ際に、「デトックス」というフレーズが使われることもしばしばあります。また最近では、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器と意識的に距離を取り、疲労やストレスを軽減しようとする「デジタルデトックス」という言葉も話題となっています。
有害物質(毒素)とは?
デトックスの対象となる、体外から入り込む可能性のある有害物質(毒素)とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。定義はさまざまですが、例として以下のような化学物質やミネラルなどを指すことがあります。
- ・カドミウム
- ・ヒ素
- ・鉛
- ・水銀
- ・放射性セシウム
- ・ダイオキシン
- ・アルカロイド類
- ・ヒスタミン
- ・アクリルアミド
- ・トランス脂肪酸
これらは鉱物や土壌、海水、底質などの中に天然に存在していて、食事などを通して体内に蓄積されることがあります。体内の蓄積量が多くなりすぎると健康に支障をきたすことがあるため、適切に排出する必要があるといわれています。その方法の一つとしてデトックスが挙げられます。
過剰なデトックスには注意が必要
そもそも体には、体内に取り込んだ物質を分解したり、毒性を弱めたりする機能がもとから備わっています。例えば、肝臓は体の状態を安定的に保つため、上述の有害物質をはじめとした生体外異物の代謝や解毒にとって重要な臓器といわれています。そのため、わざわざ過剰なデトックスをする必要はないとも考えられています。
むしろ、過剰にデトックスを試みることによって、体に悪影響が生じるケースも少なくありません。過剰なデトックスの例として、デトックスを目的に水とハーブティーを大量に飲み、何日も食事を摂らない生活を続けた結果、危険な電解質異常を引き起こしたというケースがあります。他にも、下剤を服用したことによって、脱水や電解質異常をきたすような重症の下痢を引き起こしたり、ひどい場合には胃腸や腎機能に障害が生じたりすることもあります。
デトックスに関する研究は現状まだ少ないため、必要性や安全性については、専門知識を保有した人などに相談したうえで判断する必要がありそうです。また、持病があったり、体の不調を感じたりしている場合は、医療機関を受診するようにしましょう。
デトックスはどのような作用と関係がある?
上述の通り、デトックスと健康との関係についてはまだ研究段階にあるといえますが、どのような作用との関係が見込めるのでしょうか。
便秘の解消
便秘の原因の一つとして、腸のぜん動運動(腸の内容物を先へ先へと運ぶための運動)が十分に行われないことが挙げられます。ぜん動運動が弱くなると、腸の内容物が大腸内に停滞し、便秘につながってしまいます。
便秘になるとお腹が張ったりガスが溜まったりする他、溜まって固くなってしまった便を出そうして、肛門に負担がかかることで痔になることがあります。また、便秘を放っておくと、大腸に潰瘍(かいよう:ただれのこと)ができたり、穴があいて、そこからお腹の中に便の細菌が広がり、腹膜炎という炎症を引き起こしたりすることもまれにあります。
便秘の予防・解消に大切とされる習慣として、食物繊維を適切に摂取することが挙げられます。食物繊維は腸のぜん動運動を助けたり、便の性状を柔らかくしたりする効果が期待できます。その結果、排便が促されることで便秘の解消が期待でき、デトックスにもつながるといえます。
肌荒れの改善
肌荒れは、乾燥や洗浄剤成分、紫外線などの生活環境を中心とした外的要因と、生理機能の変調や疾病、精神状態の変化などの内的要因が関係しています。
例えば、上述の便秘も、肌荒れを生じさせる内的要因の一つといえます。排便などにより体内の老廃物がスムーズに排出され、腸内環境が整えば、内的要因の解消となり、肌荒れの改善効果も期待できるでしょう。
むくみの改善
むくみとは、体内に余分な水分が溜まった状態のことをいいます。むくみを改善するには、体に溜まった余分な水分の排出を促す必要があります。
むくみの原因には心不全、高血圧、炎症、薬の副作用など、さまざまなものが挙げられます。病気の影響によるむくみは、原因となる病気を治療することが改善の近道です。しかしなかには、例えば塩分の多い食事を摂った影響で、腎臓からのナトリウムの排泄が一時的に不十分になり、むくみが生じることもあります。
そのような場合には塩分の摂取量が過剰にならないよう気を付けると、ナトリウムが適切に排出されるようになり、むくみの改善につながると考えられます。
また、いわゆる「デトックス」製品のなかには、アルコールと同様の方法で腎臓により多くの尿を生成させて水分の排出を促し、むくみ改善効果をうたっているものもあります。作用そのものに害はないですが、排出される水分の量が多くなるため、脱水症状にならないよう注意が必要です。
デトックスにダイエット効果はある?
結論として、デトックスとダイエットは別物と考えたほうが良いでしょう。
デトックスの一例として挙げられるファスティング※やプチ断食などがダイエット(減量)を連想させる場合もあるため、「デトックスをするとダイエットにもなる」といわれることもありますが、ダイエットを目的としてデトックスをするのは注意が必要です。
- ※ファスティング:「断食」や「絶食」を意味し、一定期間食事を断つことをいう。
ファスティングやプチ断食では、摂取する食事の量が制限されることとなるため、必然的に減量につながるといえますが、その効果は持続的なものではありません。また、必要な栄養素の摂取が妨げられて、頭痛、失神、脱水症状などを引き起こす可能性があります。よって、デトックスとダイエットは切り離して考えることが必要といえます。
腸とデトックスの関係とは
腸は、その役割からデトックスに関係しているといわれることがあります。
腸の主な役割は、消化によって食べ物の栄養や水分を吸収し、不要な食べかす(老廃物)を排出することです。このことがデトックスを連想させるため、関係が深いといわれるのでしょう。
なお、腸は口から肛門まで一本の管でつながった形状のため、皮膚と同じように、体外から取り込まれる物質と直接接触します。そのことから、医学的には腸の内部は「体外」、腸の内部から吸収された先が「体内」と表現されることがあります。腸は有害物質(毒素)を排出するだけでなく、腸の内部(体外)にそれらをとどめ、体内に漏らさないようにするバリア機能の役割も果たしています。腸内環境が乱れると腸のバリア機能が崩れ、腸壁の隙間から、体内に病原菌や異物などの有害物質が侵入しやすくなる「リーキーガット症候群(腸漏れ)」という状態を引き起こす可能性があります。
腸漏れを防ぐには腸の働きを助ける栄養素などを摂取し、腸の働きを活発化させることが重要なポイントとなります。腸の働きの活発化はデトックスにとどまらず、体の健康を保つために大切です。
腸の働きを活発化させるためには
腸の働きを活発化させるために大切にしたいのが、腸内細菌の「善玉菌(有用菌)」(※以下、善玉菌)です。人間の腸管、主に大腸には約1,000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌が生息しています。腸内細菌は、善玉菌と「悪玉菌(有害菌)」(※以下、悪玉菌)、「日和見(ひよりみ)菌」の大きく分けて3種類で構成されており、それらの腸内細菌の集まりのことを「腸内フローラ」といいます。善玉菌には酪酸菌や乳酸菌、ビフィズス菌などが該当し、腸内を弱酸性にすることによって悪玉菌の増殖を防ぎ、腸内環境を整える働きがあります。
また、腸の働きを助ける栄養素として大切なのが食物繊維です。食物繊維には、小腸で水分を吸収して膨張しながら糖質や脂質を一時的に取り込んで、それらが体内へ吸収されるスピードを遅延させたり、吸着作用により、食品添加物などが体内へ吸収されるのを抑えたりする働きがあります。また大腸では、腸管粘膜を刺激することでぜん動運動を促し、排便をスムーズにします。
このように、腸内環境が整うことで便通も改善され、それに伴って生じていた肌荒れやお腹の張り、むくみなども改善し、デトックスにつながることが期待されます。
今日からできるデトックス方法とは
ここでは腸内環境との関係から食材の選び方や摂取方法を工夫し、老廃物や有害物質を排出しやすくする方法について紹介します。
腸内環境を整える食材を積極的に摂取する
健康な腸内では、酪酸菌や乳酸菌、ビフィズス菌などが善玉菌として腸内環境を整えています。善玉菌を増やす食材や、食物繊維が豊富な食材を積極的に摂取すると、腸内環境が整い、スムーズな排便につながりやすくなります。
具体的にはどんな食材が効果的?
ヨーグルト、キムチ、納豆、みそ、しょう油、かつお節、チーズなどの発酵食品・調味料などは、「プロバイオティクス」とよばれ、善玉菌の増殖を刺激します。
また、オリゴ糖(きなこやハチミツなどに多いといわれています)やキノコ類、海藻類や豆類などの食物繊維を多く含む食材は、「プレバイオティクス」とよばれ、善玉菌のエサになります。食物繊維の中でも、「発酵性食物繊維」を摂取すると、より腸内環境の改善効果が期待できるでしょう。発酵性食物繊維は、特に腸内で発酵しやすく、善玉菌の増殖を助けるといわれており、近年注目が集まっています。玄米や根菜類、小麦ブラン(表皮)などに多く含まれているため、積極的に摂ると良いでしょう。
なお腸内細菌は、腸内にある程度の期間は存在しても、棲み着くことはないため、毎日続けて摂取し、腸に補充することが必要です。
サプリメントや整腸薬を活用する
酪酸菌や乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌が含まれたサプリメントの摂取には腸内環境を整える効果が期待できます。
善玉菌のなかでも酪酸菌を含む食材は少ないため、継続的に摂取するために酪酸菌が配合されたサプリメントや整腸薬を上手に活用すると良いでしょう。
腸内環境を整えることで便秘の予防・解消にもつながるため、デトックスにつながるといえます。食事と合わせて上手に活用しましょう。
デトックスについて正しく理解し、体調を整えよう
健康志向が高まる現代において、デトックスに関するさまざまな情報が存在しています。しかし体には、体内に取り込んだ物質を分解したり、毒性を弱めたりする機能がもとから備わっていて、無理に有害物質の排出を促す必要はないとも考えられています。むしろ過剰なデトックスを試みることによって、体に悪影響が生じるケースもあるため、注意が必要です。
老廃物や有害物質の適切な排出を促すには、健康な体を保つことが大切です。その方法の一つとして、まずは自分の体が持つ本来の力を最大限発揮させるためにも、腸内環境の改善から始めてはいかがでしょうか。
食事での善玉菌や食物繊維の摂取を基本に、サプリメントや整腸薬なども適切に使って腸内環境を整え、健康な体づくりを目指しましょう。
- [参考文献]
-
- ・NCCIH(アメリカ国立補完統合衛生センター)「“Detoxes” and “Cleanses”: What You Need To Know」
- ・NICS(国民保健サービス)Well「'Detox' tincture Q&A」
- ・厚生労働省eJIM 「肥満(体重管理)」
- ・厚生労働省 e-ヘルスネット「便秘と食習慣」「食物繊維の必要性と健康」「腸内細菌と健康」
- ・農林水産省「農林水産省が優先的にリスク管理を行う対象に位置付けている危害要因についての情報(有害化学物質)」
- ・MSDマニュアル家庭版「皮膚の構造と機能 - 17. 皮膚の病気」
- ・健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」