更新日:2023年10月02日

善玉菌(有用菌)の働きとは?善玉菌を増やすために知っておきたい生活習慣も紹介

監修:内藤 裕二 先生(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授)

善玉菌(有用菌)の働きとは?善玉菌を増やすために知っておきたい生活習慣も紹介

「善玉菌(有用菌、以下善玉菌)」と「悪玉菌(有害菌、以下悪玉菌)」は、どちらもよく耳にする言葉です。腸の中で生息している善玉菌と悪玉菌は、私たちの健康に対してどのような働きをしているのでしょうか。
ここでは、善玉菌にフォーカスをあて、善玉菌の働きや腸内フローラのバランスを整えるメリット、また、善玉菌を増やすことはできるのかなど、知っているようで知らない善玉菌について、詳しく解説します。

善玉菌とは?

腸内細菌は大きく3つに分けられる

人間の腸の中には、約1,000種類、100兆個の細菌が生息しているといわれ、合わせれば1~2kg以上の重さになるとされています。この細菌の集まりのことを、「腸内フローラ」または「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と呼びます。

腸内の細菌は、人間の体に良いことをしようとか悪さをしようという考えがあって腸内に棲み着いているわけではありません。人間の腸内が、それらの細菌の生存に適した場所だから、生息しているのです。

しかし、人間の側から見ると、健康の維持・向上に都合の良い「善玉菌」と、その反対で都合の悪い「悪玉菌」、ふだんはどっちつかずの「日和見(ひよりみ)菌」という3つのタイプに分けることができます。その割合は、健康な日本人の場合、およそ2対1対7だと考えられています。

また近年は、さまざまな種類の細菌が共存していること、つまり「腸内細菌の多様性」が、健康にとって重要であることもわかってきました。

善玉菌にはどのような種類の菌がある?

・酪酸菌

酪酸菌は主に大腸に生息していて、主に酪酸を産生する菌です。腸内の悪玉菌に対して拮抗作用(対抗する作用)を示し、ほかの善玉菌と共生しながら整腸作用を発揮します。また、酸やアルカリ、熱、あるいは感染症の治療のために処方される抗菌薬などに対して耐性があることも特徴です。ただし、近年の研究から、酪酸菌単独よりも、ほかの善玉菌との共生により、酪酸を多く産生することがわかってきました。

・乳酸菌

乳酸菌は主に小腸の下部~大腸に生息しています。人間が食べたものを発酵する過程で、その中に含まれている糖から乳酸を産生する菌です。周辺環境を弱酸性に保って、悪玉菌の繁殖を抑制するように働きます。

・糖化菌

糖化菌は小腸に生息していて、消化酵素の一つである「アミラーゼ」を産生して、デンプンを糖に分解し、デンプンを分解できない乳酸菌の発酵を助けるようにも働きます。「体に良い」といわれることが多い納豆菌も糖化菌の一種です。

・ビフィズス菌

ビフィズス菌は主に大腸に生息しています。乳酸や酢酸を産生して、腸内を弱酸性の状態にして環境を整えます。大腸の中のビフィズス菌の量は、加齢とともに減少していくという研究報告があり、また近年の日本人では、ビフィズス菌量がゼロの人も稀ではないという報告もあります。その他、軟便の傾向がある人はビフィズス菌量が少ないというデータもあります。

腸内フローラにおける善玉菌の働き

腸内フローラはバランスが大切

悪玉菌は、健康に悪さをする菌とされていますが、悪玉菌が全くなくなってしまうと、それはそれで良くない可能性があります。最近の研究では、悪玉菌や日和見菌とされていたものの中にも良い働きをする菌とそうでない菌がいることもわかってきました。

実際、どんなに悪玉菌を減らして善玉菌を増やそうとしても、悪玉菌がゼロになったり、善玉菌だけになったりすることはありません。腸内細菌全体のバランスで考えて、悪玉菌を増やさずに、善玉菌が優勢な状態が崩れないようにすることが大切です。

善玉菌は、どのような働きをする?

・悪玉菌が増えないようにする

善玉菌は腸内の環境を弱酸性にします。それによって、弱アルカリ性の環境を好む悪玉菌の増殖や活動が抑制されます。

・腸のぜん動運動を活発にする

便秘のときは、腸内の悪玉菌が増加している状態です。善玉菌は、大腸のぜん動運動(腸の内容物を先へ先へと運ぶための運動)を活発にする働きがあり便秘を防ぎます。

・腸粘膜のバリア機能を高める

善玉菌の整腸作用の一つとして、ぜん動運動の刺激のほかに、腸の内側の粘膜層によるバリア機能を高めることも挙げられます。バリア機能が高まると、体に良くない物質が体内に吸収されるのが防がれて、慢性炎症などが起きにくくなると考えられています。

・免疫を調整する

免疫を担う全身の細胞の約7割が腸にあるといわれています。腸内の善玉菌はそれらの細胞の働きを助けて、感染症にかかりにくくしたり、過剰な免疫反応ともいえるアレルギーの症状を抑えたりします。

・ビタミン産生やコレステロール低下

善玉菌はビタミンB群やビタミンKを産生していることが知られています。また、食品に含まれているコレステロールを吸着して便として排泄したり、肝臓でのコレステロール産生を抑えたり、胆汁酸(脂肪分を分解するのに必要な消化液)の腸での再吸収を抑制したりして、血液中のコレステロールを下げるように働くことも報告されています。

悪玉菌がもたらすデメリットとは?

悪玉菌は、腸の内容物の腐敗を促して食中毒を起こしやすくしたり、有害物質を産生して細胞にダメージを与えたりします。また、悪玉菌が増えるとおならのニオイがきつくなるともされています。

細胞のダメージが生じることによる健康への悪影響の一つとして、がん(とくに大腸がん)のリスクが高まる可能性があります。また、腸の中の有害物質は血液などを介して体内に吸収され、全身の炎症を引き起こして、肥満や糖尿病、アレルギー疾患になりやすい状態にしたり、老化現象を速めたりすることが考えられます。美容という点では、腸内フローラのバランスの乱れが、肌荒れに関連しているという研究結果もあります。

加えて、悪玉菌が優勢になってくると、善玉菌の整腸作用が妨げられてしまいます。その影響のために便秘や下痢が起こりやすく、それがさらに腸内を悪玉菌に適した環境にしてしまうという悪循環を生じかねません。

日和見菌は悪玉菌が優勢になるとその味方につく

日和見菌は、腸内細菌の7割を占める菌で大腸菌、腸球菌、緑膿菌などが該当します。ふだんはおとなしく、良いこともしなければ悪いこともしない細菌ですが、腸内フローラのバランスが崩れて悪玉菌が優勢になってくると、悪さをし始めます。いつもはどっちつかずの多数派層の日和見菌を悪玉菌の味方にさせないことが、腸内環境と健康の維持にとって重要なポイントです。

※おなかの不調には思わぬ病気が潜んでいる場合もあります。心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

善玉菌を体の中で増やす方法

善玉菌を増やすためには、善玉菌と栄養(エサ)となるような食品をなるべく多く腸に送り届けることが大切です。

善玉菌の多い食べ物を摂取する

善玉菌が多く含まれている食品としては、ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、漬物などの発酵食品が該当します。

なお、肉類を食べ過ぎると、悪玉菌が増殖するので、肉類を食べるときは発酵食品などの善玉菌の多い食材もバランスよく摂取しましょう。

ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、漬物などの発酵食品

善玉菌のエサとなる食べ物を摂取する

善玉菌のエサに食物繊維が挙げられます。食物繊維の多い食材としては、きのこや穀類など。穀類でいえば、白米より玄米のほうが食物繊維は豊富です。

また、食物繊維は大腸で便のカサを増やし大腸に刺激を与えることで便秘を改善し、悪玉菌が発生しやすい状況を防ぐよう働いてくれます。

食物繊維はかつて、消化されにくく、吸収されずに排泄されるだけであり、食べ物の“かす”のように考えられていましたが、今では、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルに続く「第6の栄養素」として位置づけられています。

善玉菌に良い食べ方をする

摂取した善玉菌がしっかりと腸に届くようにするために、消化管の活動を整えることも大切です。
例えば、食事の前に水分を摂ると、腸のぜん動運動が活発になって、食べ物の消化・吸収に良いことが知られています。また、よく噛んでゆっくり食べると副交感神経の働きが高まり、食べ物の消化・吸収を助けます。

なお、夕食はどんなに遅くても、眠りにつく1~2時間前には食べ終えるようにしましょう。おなかの中に未消化のものがたくさん残った状態で寝てしまうと、腸内環境が悪化しやすくなるためです。

プロバイオティクスを意識して摂る

善玉菌を増やすためには、プロバイオティクスを意識して摂ることも大切でしょう。
プロバイオティクスとは経口摂取する善玉菌のことで、発酵食品など食品だけでなく、サプリメントや医薬品・医薬部外品(整腸剤)も該当します。食生活の偏りが不安なときは、食生活を修正する努力とともに、サプリメントや整腸剤の利用を考えてみるのも良いかもしれません。

腸内環境の改善に

ストレスを解消しよう

食事以外に、睡眠や運動などの生活習慣を見直すことでも、腸内の善玉菌の勢力を後押しできます。

・質の良い睡眠を十分にとろう

近年、睡眠の質が良くなかったり、睡眠時間が短すぎたりすること(睡眠不足)が、心身の健康にさまざまな悪影響を及ぼすことがわかってきています。その一つとして、睡眠不足と腸内フローラのバランスの乱れとの関係も報告されています。善玉菌を増やすためにも、毎日規則正しく、質の良い睡眠を十分にとりましょう。

・適度な運動を行おう

適度な運動は腸内環境を改善するといわれています。また、運動をすることで血行の促進や自律神経の活性を促す効果も期待できます。自律神経が整うと、腸のぜん動運動の促進や、便秘解消につながるため、腸内フローラのバランスを整えることにつながります。少し息が上がるくらいの運動を、無理のない範囲で習慣的に続けましょう。

腸は“第二の脳”と呼ばれており、専門的には「腸脳相関」という医学用語もあるほど、脳の働きと密接に関係している臓器です。実際、ストレスが加わると、腸内フローラの多様性が低下してしまうという報告もあります。腸内環境を最適な状態にしておくためにも、ストレスをできるだけ解消しましょう。

ふだんから腸の中の善玉菌を意識した生活を!

100兆個もあるといわれる腸内細菌の約2割が善玉菌とされています。たくさんあるように感じるかもしれませんが、生活習慣の乱れや、ちょっとした体調不良をきっかけに悪玉菌が優勢になると、多数勢力の日和見菌がそちらについて、善玉菌が劣勢になってしまい、体調がより悪化しかねません。ふだんから善玉菌を増やすことを意識した生活を心がけましょう。

[参考文献]
  • ダイヤモンド社「人生を変える賢い腸のつくり方」内藤裕二(著)
  • あさ出版「酪酸菌を増やせば健康・長寿になれる」内藤裕二(著)
  • 文響社「腸すごい!医学部教授が教える最高の強化法大全」内藤裕二 (著), 小林弘幸 (著), 中島淳 (著)
  • 栄養と料理72(6),2006「腸内細菌をととのえよう!腸の善玉菌を増やす方法」
  • 科学87(7),2017「善玉菌・悪玉菌と免疫システム」
  • PHP研究所「腸の善玉菌を増やす!『乳酸発酵』でつくる野菜漬け」,2023
  • 技術評論社「人の健康は腸内細菌で決まる!」,2011

監修医プロフィール

内藤裕二先生

京都府立医科大学大学院
医学研究科 教授
内藤 裕二 先生

詳しくはこちら

腸活コラム一覧はこちら

PRODUCT ビオスリー製品情報

おなかの調子を整えるなら ビオスリー

ビオスリーHi 錠 整腸(便通を整える)
便秘・軟便・腹部膨満感