更新日:2024年04月24日
腸内フローラのバランスを整えるには?理想的なバランスや改善方法を紹介
監修:内藤 裕二 先生(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授/一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長/日本潰瘍学会理事長/日本酸化ストレス学会理事長)
INDEX
「腸内フローラ」のバランスを整えることは、腸内環境を改善する上で大切とされています。このバランスが崩れてしまうと、腸内だけではなく体全体に良くない影響をもたらす可能性もあります。今回は、腸内フローラのバランスにフォーカスし、理想的なバランスや、乱れてしまう原因、バランスを整える方法を紹介します。腸内フローラについての知識を深め、より良い腸活ライフを送りましょう。
腸内フローラとは
私たちの腸内には、「腸内細菌」と呼ばれる約1,000種類、100兆個もの細菌が棲みついています。
腸内細菌には、腸内や体全体に良い影響を及ぼす菌もいれば、悪い影響を及ぼす菌もおり、その種類ごとに腸の壁にまんべんなく張り付いて生息しています。その様子がお花畑のように種類ごとに集まって群生している(英語でflora: 植物相、植生)ように見えることから、一般的に「腸内フローラ」と呼ばれています。
正式名称は「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」といいますが、「叢」は「くさむら」とも読み、植物が茂っている「草むら」を意味しています。お花畑や草むらに例えられるように、腸内では腸内細菌が腸壁に密集して棲みついています。
「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」のバランスが重要
腸内フローラを構成する腸内細菌は、「善玉菌(有用菌)」(※以下、善玉菌)、「悪玉菌(有害菌)」(※以下、悪玉菌)、「日和見(ひよりみ)菌」の3種類に分けられます。
善玉菌は、乳酸や、短鎖脂肪酸と呼ばれる酪酸、酢酸などを作り出して腸内を弱酸性にすることで、酸性に弱い悪玉菌が増えるのを防ぎ、腸の動きを促進する働きがあります。「食中毒を予防する」「腸内フローラを整える」といった、健康に必要な役割を担っている細菌です。善玉菌の代表としては、普段耳にすることも多い乳酸菌や、酪酸菌、ビフィズス菌などが挙げられます。
一方、悪玉菌は、腸内のものを腐敗させて毒性物質を作り出し、腸内を弱アルカリ性にする働きがあります。それが食中毒や病気の原因になることも。悪玉菌の代表としては、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、大腸菌(有毒株)、緑膿菌などが挙げられます。
これらの善玉菌・悪玉菌のどちらにも属さない菌を日和見菌といいます。日和見菌の中には、善玉菌・悪玉菌のバランスが崩れ、どちらかが腸内で優勢になると、その菌と同じ働きをする菌も。
このように、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」はお互いに影響を及ぼし合いながら、腸内でバランスを取っています。どれかひとつが増えすぎても腸内環境は安定しないため、これらのバランスを整えることが大切なのです。
理想的な腸内フローラのバランスとは
腸内フローラのバランスは、食事や生活習慣によって変動しています。腸や体全体の健康を維持するための理想的なバランスは、「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」といわれています。
善玉菌が体に良い働きをするのに対して、悪玉菌は病気の原因になるなど、あまり良いイメージはないかもしれません。一見、腸内からなくしたほうが良さそうにも思えますが、善玉菌とのバランスが重要であるため、善玉菌が正常に働くためにも、悪玉菌は一定数必要といわれています。ただし、増えすぎると腸や体全体に悪影響が及ぶことがあるので、注意を払う必要があります。
先ほども説明したように、日和見菌の中には、善玉菌と悪玉菌のうち、より数が多いほうの味方をして同じような働きをする菌もいます。そのため、腸内における善玉菌の割合を悪玉菌より多くして、善玉菌を優勢にしておくと良いでしょう。そうすることで、日和見菌を悪玉菌の働きに加担させず、善玉菌の味方につけることができ、腸内フローラのバランスを整えることができます。
腸内フローラのバランスが崩れるとこんな影響が
これまで見てきたように、悪玉菌が増えて優勢になると、腸内フローラのバランスは崩れてしまいます。すると、腸の動きや働きが鈍くなり、便秘や下痢になることも。また、ブドウ球菌やサルモネラ菌などの悪玉菌が増殖した場合、食中毒を引き起こす可能性があります。
また、悪玉菌には腸内の食べ物を腐敗させ、発がん性のある毒素を作り出す働きもあります。悪玉菌が作り出す毒素は、腸にダメージを与えるだけでなく、血液に流れ込んで体全体に悪影響をもたらすことも。
さらに、腸内フローラのバランスは体の免疫や病気の予防に深く関わっており、そのバランスが崩れると、免疫機能が低下する他、肥満、糖尿病、大腸がんなどの病気の要因となってしまう場合もあります。そのため、悪玉菌の増殖を抑えて腸内フローラのバランスを整えることが、体の健康にとって非常に大切なのです。
腸内フローラのバランスが崩れてしまう原因は?
腸内フローラのバランスを整えるには、まずはバランスが乱れる原因をしっかり把握することが大切です。生活習慣などを振り返りながら、一緒にチェックしていきましょう。
加齢による腸の変化
腸内フローラのバランスは、年齢を重ねるごとに少しずつ変化しています。一般的には、善玉菌が減り、悪玉菌が増えていくといわれています。例えば、善玉菌のひとつであるビフィズス菌は、生まれてすぐの赤ちゃんには100億個以上あるといわれていますが、成人期後半から減少し、老年期には1億個ほどにまで激減することがわかっています。
また、歳を重ねると足や腕の筋力が落ちてくるように、腸を動かす筋肉の力も低下します。その結果、大腸の運動が低下して便秘になりやすくなり、腸内フローラのバランスが乱れる原因のひとつとなってしまうのです。
栄養バランスが偏った食事
腸内細菌は、腸内にある食べ物をエサとして増えていくため、食事は腸内フローラに大きく影響しています。
例えば、タンパク質や脂質に偏った食生活を送っていたり、善玉菌を増やすために必要な食物繊維やオリゴ糖を含む、穀物や海藻類、野菜などの食品を食べない生活が続いていたりすると、悪玉菌が優勢になり、腸内フローラのバランスが崩れてしまうことがあります。
睡眠不足や生活リズムの乱れ
睡眠不足も、腸内フローラのバランスが乱れる原因のひとつです。睡眠不足が続いていると、それを解消するために、休日にお昼過ぎまで寝てしまうといったこともあるかもしれません。こうした生活リズムの乱れによって体内時計がずれてしまうことも、腸内フローラのバランスが乱れる原因になります。
最近では、腸内細菌にも体内時計が存在し、私たちの生活リズムの変化や体内時計の乱れが腸内フローラに影響を与えているという報告も。一見関係がないように思える睡眠や生活のリズムも、腸内フローラのバランスに密接に関わっていることがわかってきています。
ストレス
心配ごとやプレッシャーを感じると、お腹の調子が悪くなる、という人もいるのではないでしょうか。
腸は「第二の脳」とも呼ばれており、精神的なストレスがかかると、腸内フローラのバランスや腸内細菌の多様性に影響が出ることがあります。反対に、腸内フローラがストレスに影響するという報告もあり、脳と腸は相互に影響しあっているといわれています。医学的にはこれを「腸脳相関」と呼び、関連性についての研究が進められています。また、ストレスは睡眠不足や過食などの原因にもなり、さらに腸内環境を悪化させてしまう可能性があるため、早めに対処することが大切です。
便秘
便秘によって腸内に老廃物が長く留まると、悪玉菌の働きが活発になり、腸内環境が悪化してしまいます。悪玉菌が増えると、腸内の動きが鈍くなり、腸内フローラのバランスがさらに崩れる原因に。
また、一度便秘になると、快便をもたらしてくれる善玉菌が劣勢になり、悪循環に陥ってしまうことがあります。そのため、便秘が慢性化する前に腸内フローラのバランスを整えることが大切です。
習慣化したい!腸内フローラのバランスを整える方法
腸内フローラのバランスが乱れる原因には、加齢など改善が難しいものもありますが、偏った食生活や睡眠不足によってバランスが崩れている場合、生活習慣を見直すことで腸内環境を改善することができます。ここからは、腸内フローラのバランスを整える方法を紹介します。日々の生活を見直して、腸内環境を改善しましょう。
食生活を見直す
腸内環境は食べたものの影響を受けやすいため、まずは食生活を見直しましょう。腸内フローラを理想的なバランスに近づけるには、食事を通じて善玉菌を増やし、悪玉菌を減らす工夫が必要です。
善玉菌を増やすには、エサとなる食物繊維を多く含む大麦や海藻、野菜を積極的に摂ると良いでしょう。一方、魚や肉などのタンパク質は体に必要不可欠な栄養素ですが、食物繊維を摂らずに魚や肉などに偏ってしまうと、善玉菌のエサが不足し、結果的に悪玉菌が増える原因となるので、バランスを考えて食事をすることが大切です。
糖質制限などにより、タンパク質を多く摂りたい場合は、大豆や、納豆・豆腐など大豆製品がおすすめ。食物繊維と良質なタンパク質を同時に摂取することができます。
サプリメントや市販薬を活用する
仕事や家事が忙しく、食事の見直しが難しい場合は、サプリメントや市販薬を活用するのもひとつの手です。
善玉菌を配合した整腸剤を使えば、腸内フローラのバランスを整えるとともに、悪玉菌が増える原因となる便秘を解消することが期待できます。
善玉菌には、乳酸菌・酪酸菌・ビフィズス菌などさまざまな種類がありますが、それぞれ働きや働く部位が異なるため、複数の種類が配合されたものを選ぶと良いでしょう。
規則正しい睡眠を心がける
睡眠不足を解消し、生活リズムを安定させることも大切です。
休日に寝だめをすると生活リズムが不安定になりがち…。できるだけ毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることで、睡眠時間をしっかり確保し、体内時計を整えましょう。
また、寝る前にスマートフォンを見たり、カフェインを含むコーヒーや紅茶を飲んだりすると、寝つきが悪くなるため注意が必要です。就寝前は部屋の灯りを暗くしてスマートフォンを見る時間を減らしたり、飲み物もノンカフェインのものを選んだりして、リラックスする時間を取りましょう。
適度な運動を行う
適度な運動を行うと、腸内で善玉菌が増えるという報告もあります。運動を通じて善玉菌を増やし、腸内フローラのバランスを整えましょう。
例えば、少し息が上がる程度の早足で歩くなど、適度な運動を日頃から行うか、ランニングやサイクリングといった有酸素運動を週に3回程度行うと効果的です。運動は習慣化することが大切なので、無理をせず、楽しみながら続けられる範囲で体を動かしてみましょう。
ストレスを発散する
ストレスは腸にとって大敵です。ストレスなく過ごすことが理想ですが、仕事や子育てなどに追われていると、なかなかうまくいかないこともあります。
そうした忙しい毎日でも、ストレスが溜まっていると感じたら、できるだけ休息をとったり、ストレスを発散したりして、無理をしすぎないようにしましょう。深呼吸する、音楽を聴く、趣味を楽しむなど、心身を休めてリラックスできることを積極的に行うと、ストレスが発散され、腸内フローラのバランスも整います。
腸内フローラのバランスを整えるには、日々の生活の見直しから!
腸内フローラは、食事や睡眠など、生活習慣から大きな影響を受けます。理想的な腸内フローラのバランスを保つためにも、まずは日々の生活を見直してみましょう。食生活の改善が難しい場合や気軽にセルフケアを行いたい場合は、サプリメントや市販薬を活用するのもおすすめです。
- [参考文献]
-
- ・厚生労働省eヘルスネット
- ・順天堂医学50巻4号(2004)
- ・日本内科学会雑誌 第105巻第9号
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