更新日:2024年6月24日

オリゴ糖はお腹に良い?働きやオリゴ糖を含む食品、おすすめの摂取方法も紹介

監修:内藤 裕二 先生(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授/一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長/日本潰瘍学会理事長/日本酸化ストレス学会理事長)

オリゴ糖はお腹に良い?働きやオリゴ糖を含む食品、おすすめの摂取方法も紹介

「オリゴ糖」と聞くと、お腹に良さそうというイメージを持つ方は多いかもしれません。しかし、具体的にどのような効果があるのでしょうか。今回は、「そもそも“オリゴ糖”って何?」「砂糖とどう違うの?」という疑問にもお答えしながら、オリゴ糖を効率的に摂取できる、おすすめの方法についても紹介します。

オリゴ糖とは

主な糖の種類

オリゴ糖は、「糖」の一種。まずは、糖とはどのようなものか、解説します。

「糖」とは、エネルギー源となり得る三大栄養素(主要栄養素)のひとつの「炭水化物」から、人が消化・吸収できない食物繊維を除いたものです。糖は、その大きさ(分子量)から、単糖類、少糖類(オリゴ糖)、多糖類に大別されます。

・単糖類

胃腸での消化を受けても、それ以上は分解されない状態の糖のことで、ブドウ糖や果糖などが該当します。単糖類のうちブドウ糖は、全身の細胞の主要なエネルギー源です。後述の少糖類や多糖類は、このブドウ糖などの単糖類が複数個つながった形で構成されています。

・少糖類

単糖が2~10個結合している状態の糖のことで、「オリゴ糖」とも呼ばれます。「オリゴ」とはギリシャ語で「少ない」という意味です。
少糖類の中でも、単糖が2つ結合しているものは「二糖類」、3つ結合しているものは「三糖類」とも呼ばれます。オリゴ糖の中でも二糖類は「糖類」に分類されます。
なお、オリゴ糖の中には、「二糖類」のように小腸までに消化・吸収されてエネルギー源になるものと、消化・吸収されにくく大腸まで届くものがあり、後者は「難消化性オリゴ糖」に分類されます。今回は、その難消化性オリゴ糖を中心に話を進めていきます。

・多糖類

単糖がより多く結合した状態の糖のことで、でんぷんなどが例として挙げられます。単糖類や少糖類よりも消化に時間がかかることから、それらと比べて食べた直後の血糖値の上昇が穏やかとされています。多糖類の中には、人が持つ酵素で分解されずそのまま大腸に届くものもあります。

・糖アルコール

果物や野菜・発酵食品などから人工的に取り出し、人工甘味料として使われている糖のこと。例えばキシリトール、ソルビトールなどが該当します。糖アルコールは消化・吸収されにくく、エネルギー源として利用されません。また、一度に大量摂取すると、お腹を壊すこともあると言われています。

オリゴ糖の種類

オリゴ糖は、動植物から作られる天然由来のものと、ブドウ糖やショ糖(砂糖)、でんぷんなどから人工的に作られるものがあります。また、結合している糖の種類や結合の構造などによって、甘味の強さや、熱や酸に対する強さ、体への働きかけなどが少しずつ異なり、それぞれ特徴を持つ多くの種類が存在しています。それらの中から、ここでは代表的なものを紹介します。

・乳糖(ラクトース)

母乳に多く含まれている二糖類で、赤ちゃんの主要な糖質源です。他のオリゴ糖と同じように、ミネラルの吸収を高める働きや整腸作用を持っています。

・ガラクトオリゴ糖

乳糖に酵素を反応させることで得られるオリゴ糖。商品として流通しているものは、牛乳に含まれている乳糖を原料として製造されていますが、母乳にもガラクトオリゴ糖が含まれています。このガラクトオリゴ糖は、高齢者の下痢や便秘を改善するという研究結果が報告されています*1

  • 1 JATAFFジャーナル10(5), 2022「ガラクトオリゴ糖の機能と製品開発」

・フラクトオリゴ糖

にんにく、たまねぎ、ごぼう、バナナ、はちみつなどに含まれているオリゴ糖。1984年に日本の食品会社が世界初の機能性オリゴ糖素材として発売したことでも知られています。砂糖に酵素を作用させて製造されており、甘味はやや弱いものの砂糖に似ていて、菓子などに用いられています。

・イソマルトオリゴ糖

みそ、しょうゆ、はちみつなどに天然成分として含まれているオリゴ糖。人工的には、とうもろこしのでんぷんに酵素を作用させて製造され、熱や酸に対して強いという性質を持ちます。シロップやテーブルシュガーなどに使われています。

・シクロデキストリン(α-オリゴ糖など)

単糖のブドウ糖分子が6~8個ほど環状に(輪のように)結合しているオリゴ糖。この独特の構造から、輪の中にコレステロールなどを摂り込んで吸収を阻害する「包接(ほうせつ)」という、他のオリゴ糖にない作用を持っています。なお、ブドウ糖分子が6個のものは、α-オリゴ糖と呼ばれます。

砂糖やはちみつとは何が違う?

砂糖はショ糖(スクロース)とも呼ばれる二糖類の甘味料です。また、糖やミネラルを含み、砂糖のように甘味料として利用されることが多いはちみつは、含まれている糖の大半が果糖やブドウ糖という単糖類。そのため砂糖やはちみつの糖は、どちらも小腸で消化・吸収されて血糖(血液中のブドウ糖)になりやすく、またエネルギー量(カロリー)は1gあたり約3~4kcalあります。

それに対してオリゴ糖(難消化性オリゴ糖)は、口から入って小腸までの間でほとんど消化・吸収されずに、そのまま大腸に到達します。そのため血糖値にほとんど影響がありません。そのうえ、腸内細菌に対する働きかけによって、健康に好ましいさまざまな影響が期待できます。エネルギー量も1gあたり約2kcalと、砂糖やはちみつの半分程度です。

オリゴ糖の特徴と働き

・腸内の善玉菌のエサになる

食べ物に含まれている栄養素の多くは、胃から小腸までの間に胃液などの消化液で消化され、小腸で血液へと吸収されます。そして、血液の流れにのって全身に運ばれ、利用されます。
一方、難消化性のオリゴ糖は、小腸までの消化液ではほとんど消化されないまま大腸に到着します。そして、大腸に生息している腸内細菌のうち、人の健康にとってプラスに働くとされる、ビフィズス菌などの「善玉菌(有用菌)」(※以下、善玉菌)のエサとなります。すると難消化性のオリゴ糖は、短鎖脂肪酸などに代謝(栄養素が利用されて他のかたちに変化する過程)されます。
こうしてできた短鎖脂肪酸は、腸内を弱酸性にして「悪玉菌(有害菌)」(※以下、悪玉菌)が増えにくい環境に整えます。また、同じく善玉菌に含まれる酪酸菌も、難消化性のオリゴ糖が代謝されることで増加し、その酪酸菌が作る酪酸は、大腸のぜん動運動(腸の内容物を先へ先へと運ぶための運動)のエネルギー源として使われて、整腸作用をもたらします。

・血糖値やインスリン分泌を刺激しにくい

オリゴ糖は糖質でありながらも、小腸で消化・吸収されないことから、血糖になりにくいという特徴があります。つまり、摂取した後も血糖値が上がりにくいとされています。そのため、血糖を細胞に取り込むために必要とされる「インスリン」というホルモンの分泌を、ほとんど刺激しません。
糖尿病の人は、食後の高血糖が血糖コントロール悪化の大きな原因のひとつとなります。また、糖尿病でない人でも、インスリン分泌量が多い「高インスリン血症」という状態では、体重が増えやすく動脈硬化の進行が速くなることが知られています。砂糖ではなくオリゴ糖を使うことで、血糖値やインスリンに与える影響を抑えることができる可能性があります。

・エネルギー量が低い

前述のように、糖質は一般に1gあたり約3~4kcalのエネルギー量があります。それに対して、オリゴ糖が腸内細菌によって短鎖脂肪酸などに代謝されてから吸収され、利用される過程で発生するエネルギー量は、1gあたり約2kcalと、一般的な糖質の半分程度に過ぎません。そのため、カロリーを気にしている人に、砂糖などの代わりとして用いられることがあります。

・その他の特徴

すべてのオリゴ糖に共通している特徴ではありませんが、虫歯菌の栄養源になりにくいために、甘味を感じられるにもかかわらず虫歯になりにくいというオリゴ糖も存在します。
その他にも、カルシウムやマグネシウム、鉄などのミネラルの吸収を増やす作用や、抗アレルギー作用、悪玉コレステロール(LDL-C)の吸収抑制作用、大腸がん抑制作用などが強い可能性のあるオリゴ糖もあり、基礎的な研究(動物実験など)が行われています。

オリゴ糖は腸内環境を整える?

・腸内環境と腸内フローラについて

前述のようにオリゴ糖は消化・吸収されずに大腸に到達し、善玉菌のエサとなります。善玉菌とは、腸内フローラを構成している細菌の一部です。腸内フローラには善玉菌と悪玉菌、および普段はそれらのどちらにも属さず、どちらか一方の数が多くなったときに、その味方をして同じように働くことがある「日和見(ひよりみ)菌」から構成されます。このような腸内フローラのバランスが崩れて悪玉菌が優勢になると、心身にさまざまな不調が起きやすくなります。

腸内フローラ ※イメージ

腸内環境の乱れは便秘や下痢などの消化器症状を引き起こすばかりではありません。腸には全身の免疫に関係する細胞の約70%が集まっているとされており、腸内環境の乱れが感染症やアレルギー疾患のリスクを高めると考えられています。

・腸は「第二の脳」?

腸は自律神経の働きと密接に関連していることから「第二の脳」と言われることもあります。さらに、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンという情報伝達物質の約95%は腸で作られます。これらのことから、腸内環境は自律神経の乱れに伴う不快な症状や、メンタルヘルスとも深い関係があると言われています。 このように腸内環境や腸内フローラは医学のさまざまな領域でトピックスとなり、精力的な研究が続けられています。

・腸内環境を整えるには

腸内環境へ働きかける方法として、乳酸菌などの菌そのものを摂取して善玉菌を増やそうとする「プロバイオティクス」と、善玉菌のエサとなる食品を摂取して善玉菌を増やそうとする「プレバイオティクス」という方法があります。オリゴ糖を摂取することは、後者のプレバイオティクスに該当します。オリゴ糖のほかに食物繊維もプレバイオティクスとして作用し、オリゴ糖や食物繊維は腸内フローラのバランスを整えることで、免疫機能を高めるなど、さまざまな好ましい影響を期待できることが明らかになってきています。

つまりオリゴ糖は、健康と密接な関連のある腸内環境に対して、善玉菌のエサとなることで「腸活」につながる食品と言えます。

腸活で注目されるトクホのオリゴ糖

上述の通り、オリゴ糖は健康に対してさまざまな働きを持っており、なかには特定保健用食品(トクホ)として許可されているものもあります。トクホとは、「からだの生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品」のことで、「食品ごとに有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得たもの」が販売されています*2

  • 2 消費者庁,「特定保健用食品について」より引用

オリゴ糖関連では、「おなかの調子を整える」といった表示が許可されており、トクホの許可を受けたオリゴ糖素材として、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)などが挙げられます。

オリゴ糖の効率的な摂取方法

オリゴ糖を多く摂るには2つの方法があります。1つは、オリゴ糖を豊富に含んでいる食品を積極的に摂取する方法です。もう1つは、食品素材として販売されているオリゴ糖(オリゴ糖食品)そのものを、料理に加えて摂取するという方法です。
なお、オリゴ糖の効果を期待できる最少量は、個人差はあるものの、1日1~2gと言われていて、一般的には1日10gが摂取の目安となるでしょう。

オリゴ糖を含む食品例

たまねぎやバナナ、とうもろこし、はちみつ、大豆、ごぼう、にんにくなどには、オリゴ糖が比較的多く含まれています。とはいえ、その量はいずれも微量です。例えば、可食部100gあたりのフラクトオリゴ糖の含有量を見ると、ごぼうは3.6g、たまねぎは2.8g、はちみつは0.75g、にんにくは0.6g、バナナは0.3gに過ぎません。
体にとってよりプラスの作用を期待してオリゴ糖を摂取するときは、食品素材として販売されているオリゴ糖食品(オリゴ糖素材)を使うほうが効率的と言えそうです。

特性を活かしたオリゴ糖の摂り方とは

お腹へのうれしい効果が期待できるオリゴ糖。その特性を理解した上で摂取すれば、より効果を実感できるかもしれません。

・摂取方法

オリゴ糖は一般的に熱や酸に強い性質ではあるものの、2~3時間加熱すると一部が乳糖や果糖に変わってしまいます。そのため、加熱が必要な料理で使う場合は、なるべく料理の工程の後半で加えると良いでしょう。なお、シロップタイプのオリゴ糖食品は溶けやすいため、いろいろな料理に使いやすいとされています。 また、オリゴ糖の整腸作用をより高めるためには、乳酸菌などの善玉菌や食物繊維が多く含まれている食品と一緒に食べるのがおすすめ。例えば、ヨーグルトや、果物・野菜を使ったスープ・スムージーなどです。

・保存方法

オリゴ糖食品は砂糖と同じように常温で保存できますが、直射日光は避けるようにしましょう。冷蔵庫で保管すれば、より長持ちさせることができます。

オリゴ糖の摂りすぎによる影響はある?

オリゴ糖は便秘の解消に良いものの、一度に大量に摂取すると「高浸透圧性」の下痢が生じることがあります。浸透圧とは、周囲の液体を引き付ける力のこと。オリゴ糖はその力が比較的高いため、大量に摂取すると腸の中の水分が増え、下痢を引き起こすことがあります。
オリゴ糖が持っているさまざまな作用は、たくさん摂れば摂るほど効果が高くなるというものではありません。また、一度に大量摂取するのではなく、食事や間食など数回に分けて毎日適量を摂ることが大切です。オリゴ糖を腸に慣れさせるために、使い初めは少量にとどめ、少しずつ量を増やしていくという方法もおすすめです。

お腹の調子が気になったらオリゴ糖の摂取を意識してみよう

腸内環境を整えるという働きを持つオリゴ糖。既にトクホとしても多くのオリゴ糖食品が流通しています。お腹の具合が気になったら、それらのオリゴ糖食品を試してみるのも良いかもしれません。さらに、血糖値が上がりにくい、虫歯になりにくいなど、整腸作用のほかにもさまざまな有用性を持つオリゴ糖も存在することがわかってきています。ただ一方で、一度に大量摂取した場合は下痢を引き起こしやすくなることも。オリゴ糖は腸内細菌に慣れさせることを意識しながら適量を摂取し、健康維持に役立ててください。

[参考文献]
  • ・Nutrition Care 6(4),2013「機能性成分なるほど講座/オリゴ糖」
  • ・健康ジャーナル社,2012「オリゴ糖の新事実! あなたの便秘がこれで治る!」
  • ・主婦と生活社,2007「オリゴ糖のチカラ」

監修医プロフィール

内藤裕二先生

京都府立医科大学大学院
医学研究科 教授
内藤 裕二 先生

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