更新日:2025年5月28日
便秘で腹痛が起きるのはなぜ?便秘の原因や解消方法についても解説
監修:内藤 裕二 先生(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授/一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長/日本潰瘍学会理事長/日本酸化ストレス学会副理事長)
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便秘になると腹痛が起きるのはなぜなのでしょうか?お腹の調子が悪いと生活の質も低下してしまうため、原因や解消方法を知りたいという人は多いはず。実は、便秘にはさまざまな種類があり、腸の疾患が関係している場合や、生活習慣の乱れによって腸内環境が悪くなっている場合など、便秘の原因も人によって異なります。この記事では、便秘になる原因と、便秘と腹痛の関係、便秘を解消する方法、便秘以外に考えられる腹痛の原因について詳しく解説します。
便秘によって腹痛が起きる理由とは?
便秘の症状の1つとして、腹痛や膨満感を覚えることがありますが、これらはなぜ起きるのでしょうか。ここでは、便秘の原因と、便秘が腹痛を引き起こす理由について説明します。
便秘と腹痛の関係
便秘の場合、単に排便回数が少なくなるだけではなく、腹痛やガスによる膨満感などの、不快な症状が現れることも。このような症状の背景には、腸内環境の乱れや腸のぜん動運動(腸の内容物を先へ先へと運ぶための運動)の低下が関係しています。
・便秘の原因
便秘の原因は多岐にわたり、慢性疾患や特定の薬剤が腸の動きを抑制して便秘になる場合や、加齢に伴って腸の筋力が低下し便秘になる場合などが挙げられます。さらに、ストレスや精神的な負荷、運動不足が腸の動きに影響を与えて、便秘を引き起こす場合も。加えて、偏った食生活、生活リズムの乱れも腸内環境を悪化させ、便秘を引き起こしやすくなるといわれています。
また、便秘によって「悪玉菌(有害菌)」(※以下、悪玉菌)が増加し、腸内環境が悪化すると、腸管の動きが鈍くなり、便秘がさらに悪化するという悪循環に。便秘が長引くと便の水分の吸収が進み、便が硬くなることで、排便がますます困難になることも考えられます。
・便秘で腹痛が起こる理由
便秘によって排便回数が減ると、便が腸内に溜まって腸壁を圧迫し、腹痛を引き起こします。また、腸内に溜まった便は悪玉菌の増殖を促し、ガスを発生させることも。そのガスが腸内に溜まると、腹部が張ったり、痛みや不快感を覚えることになるのです。
便秘の種類
便秘は「本来排泄されるべき糞便が大腸内に滞っている状態」とされていて、その状態が慢性的に続くことによって日常生活に支障をきたしたり、体にさまざまな支障をきたしうる状態のことを「慢性便秘症」といいます。
その慢性便秘症は一次性と二次性に分類され、一次性には「機能性便秘症」、「非狭窄性器質性(ひきょうさくせいきしつせい)便秘症」の2つ、二次性には「薬剤性便秘症」、「症候性便秘症」、「狭窄性器質性便秘症」の3つが含まれます。それぞれの特徴についてご説明します。
・一次性便秘症
一次性便秘症は、大腸や小腸そのものの機能に原因があり引き起こされる便秘症のことをいい、以下の2つに分類されます。
【1.機能性便秘症】
腸管の物理的な変化をともなわない便秘症のことをいいます。機能性便秘症はさらに、神経疾患や薬剤などの影響により大腸の運動機能が低下することで便が運ばれにくくなる「大腸通過遅延型」と、便の通過に遅れがなく大腸や肛門の機能にも問題はないものの、食物繊維の摂取量が少ないことが原因で起こる「大腸通過正常型」、さらに、腹筋や骨盤底筋群など、いきむ際に使う筋肉の筋力低下、肛門括約筋(こうもんかつやくきん)がうまく働かないことなどによって排便が困難となる「機能性便排出障害」の3つに分類されます。
【2. 非狭窄性器質性便秘症】
腸管の狭窄(何らかの原因により形状が狭くなること)は認められないものの、主に消化管の運動障害が原因となり引き起こされる便秘症のことをいいます。
・二次性便秘症
二次性便秘症は、薬の服用や疾患が原因となり引き起こされる便秘症のことをいい、以下の3つに分類されます。
【1. 薬剤性便秘症】
薬の服用により、副作用として起こる便秘症のことをいいます。抗うつ薬や抗コリン薬などが便秘症を引き起こしやすいといわれています。
【2. 症候性便秘症】
糖尿病や甲状腺機能低下症など、基礎疾患が原因となり引き起こされる便秘症のことをいいます。
【3. 狭窄性器質性便秘症】
大腸がんや腸管炎症などにより腸管が狭窄し、便の通過が妨げられることが原因となり引き起こされる便秘症のことをいいます。
便秘症において食生活の見直しは基本となります。次の項から解説する生活習慣の見直しなどを、まずは心掛けていきましょう。ただし生活習慣の見直しでも症状が良くならない場合、思わぬ病気が隠れていることもあるので医療機関を受診しましょう。
便秘による腹痛を治すには?すぐに取り組める解消方法
便秘が原因で起こる腹痛は、日々の生活を少し見直すことによって、改善が期待できる場合もあります。ここでは、便秘解消のためにすぐに取り組める具体的な方法について紹介します。
生活習慣を見直す
便秘を解消するには、まず生活リズムを整えることが重要です。特に食事や睡眠といった基本的な習慣を見直してみてください。
食事は1日3食を規則正しく摂取するように心がけましょう。なかでも、朝には「大ぜん動」と呼ばれる大きな腸のぜん動運動が起こるため、朝食を摂ることで腸が刺激され、排便が促されます。これは「胃―結腸反射」と呼ばれています。朝食を食べる習慣がない場合は、意識して食べるようにしましょう。
また、睡眠不足や質の低い睡眠は便秘の原因になることがわかっています。早寝早起きを心がけ、7~8時間の睡眠を確保することで腸内環境を整えましょう。
便秘解消が期待できる食品を摂る
便秘の原因には食生活が関わっていることも多いため、食生活の見直しが非常に大切です。偏った食事内容によって悪玉菌が増加し、腸内フローラ※1のバランスが崩れてしまうと、便秘・軟便などの便通の乱れにつながることも。
さつまいも、グリーンピース、昆布、大豆、ぶなしめじなどに多く含まれる食物繊維には、便のカサを増やし柔らかくする働きがある他、腸内の「善玉菌(有用菌)」(※以下、善玉菌)のエサとなり、腸内環境を整える働きもあります。1日の摂取目安量を守りながら、これらの食品を積極的に摂るようにしましょう。
他にも、ヨーグルトや納豆、キムチなど、乳酸菌や納豆菌を含む発酵食品、善玉菌のエサとなるオリゴ糖を含むごぼう、たまねぎ、ニンニクなどは、善玉菌を増やし、腸内環境を改善することが期待されています。
また、サンマやツナ缶、えごま油、オリーブオイル、アーモンドなどに含まれる不飽和脂肪酸には、便の滑りを良くし排便を促す働きがあるため、食事制限などで脂質の摂取を抑えている場合でも、良質な油は適量を食事に取り入れるよう意識しましょう。
※1 腸内フローラ:腸内に棲みついている約1,000種類、100兆個もの腸内細菌の集まりのこと。体に良い影響を与える善玉菌と、悪い影響を与える悪玉菌、そして善玉菌と悪玉菌のどちらにも属さず、優勢になった方と同じ働きをすることのある「日和見(ひよりみ)菌」の3種類に分けられる。これらの理想的なバランスは「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」といわれているが、最近の研究では、善玉菌とされていたものの中にも良い働きをする菌とそうでない菌がいたり、悪玉菌や日和見菌だと思われていたものの中にも良い働きをする菌がいたりすることがわかっている。そのため、腸内フローラには多様性が重要といえる。
市販のサプリメントや整腸剤を活用する
食生活の見直しを行っても改善が難しい場合には、腸内環境を整えるためのサプリメントや整腸剤を活用するのも良いでしょう。特に、乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌などの善玉菌は、腸内環境を整え、便通をスムーズにする働きがあるため、積極的に摂取したいところ。善玉菌は、種類によりそれぞれの働きや腸内での効果が異なるため、乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌がバランス良く配合された製品を選ぶのがおすすめです。特に、酪酸菌を含む食材は、ぬか漬けや臭豆腐くらいしかなく、食品から酪酸菌そのものを摂取するのが難しいため、サプリメントや整腸剤をうまく活用できると良いでしょう。
こまめに水分補給をする
水分不足は便秘の原因となるため、こまめに水を飲む習慣をつけましょう。体内の水分が不足すると、便が硬くなって排便が難しくなってしまうことも。特に食物繊維を摂取する際には、水分をしっかり摂ることで、食物繊維が腸内で水分を吸収して便が柔らかくなり、排便がスムーズになります。
腸をマッサージする
腸のマッサージは、すぐに取り入れられるおすすめの対処法です。腸をマッサージして体の外から刺激を加えることで、腸のぜん動運動が促され、便秘の解消が期待できるといわれています。ここでは、簡単にできる「の」の字マッサージをご紹介します。
・「の」の字マッサージ
- ①腸の内容物が進む方向に合わせて、お腹に「の」の字を描くように優しくマッサージします。
- ②両脇腹を上下に軽く揉みます。
- ③下腹部を下から上へ押し上げるように優しく圧迫します。

・マッサージのポイント
腸のマッサージは、入浴中に行うことがおすすめです。温熱効果によって血行が良くなり、腸の働きをより効果的に促すことができる他、リラックスできるという効果も。ただし、便秘による腹痛が強い場合には、無理にマッサージを行うのは避け、まずは体を休めましょう。
ウォーキングなどの軽い運動を行う
腸を刺激するために、軽い運動を日常生活に取り入れるのも良いでしょう。運動を終えた後には副交感神経が優位になり、大腸が活発に動き出します。
手軽に始められるものとしては、早足でのウォーキングやヨガ、ストレッチなどがおすすめです。適度な運動は腸の動きを活発にするだけでなく、脳内でセロトニンやエンドルフィンと呼ばれる神経伝達物質が増加し、気分もリフレッシュできるといわれています。

便秘以外に考えられる原因は?腹痛を引き起こす主な疾患
腹痛の原因は、必ずしも便秘だけとは限りません。ときには、思わぬ疾患が隠れている可能性もあるため、痛みが続いたり強くなったりする場合には注意が必要です。ここでは、便秘以外に腹痛を引き起こす主な疾患を紹介します。以下の症状に心当たりがある場合は、早めに医療機関を受診してください。
過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome :IBS)
過敏性腸症候群は、大腸や小腸に目に見える異常がないにもかかわらず、腹痛や便秘、下痢などの症状を繰り返す疾患です。重症になると通勤電車に乗れないなど、社会生活に影響を与えることも。発症はストレスが引き金になることが多く、日本での有病率は10~20%といわれています。
大腸がん
大腸がんは、日本で年間約15万人が新たに診断される疾患です。初期段階では無症状であることが多いですが、進行すると血便(便に血が混じる)や、便秘、下痢といった便通の異常、腹痛などの症状が見られます。大腸がんの原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因、生活習慣、食生活などが複合的に関わっていると考えられています。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こり、びらん(ただれている状態)や潰瘍(深くえぐれている状態)をともなう原因不明の疾患です。30歳以下の成人に多く見られますが、小児や50歳以上にも発症する可能性があります。この疾患の主な症状には、血便や粘血便、下痢や血が混じった下痢、腹痛、発熱、体重減少、食欲不振、貧血などが挙げられており、原因については完全には解明されていませんが、免疫系の異常や心理的要因が関与していると考えられています。
婦人科系疾患
女性の下腹部痛は、婦人科系の疾患が原因であることも多いです。特に生理痛は月経困難症や子宮内膜症が原因として考えられます。また、突然強い痛みが発生した場合は、子宮外妊娠、卵巣出血、急性骨盤腹膜炎など、緊急の対応が必要な疾患の疑いも。これらの疾患は放っておくと危険な状態になる可能性があるため、すぐに医療機関を受診するようにしてください。
便秘で腹痛を起こさないよう、腸内環境を整えよう
便秘を解消するためには、まず腸内環境を整えることが大切です。便秘や腹痛に悩んでいる方は、食物繊維を多く含む食べ物や発酵食品などを積極的に食事に取り入れ、腸内環境を整えるようにしましょう。食生活が偏りやすいときは、善玉菌が配合されたサプリメントや整腸剤を活用するのもおすすめです。また、腹痛の原因は必ずしも便秘とは限りません。思わぬ疾患が隠れている場合もあるので、痛みが強い、なかなかおさまらないという場合は、すぐに病院を受診するようにしましょう。
- [参考文献]
-
- ・内外出版社「100年腸 : 最強食物繊維があらゆる不調を改善!」,2024,内藤裕二/著
- ・南江堂,「便通異常症診療ガイドライン2023慢性便秘症」,2023
- ・文部科学省「食品成分データベース」
- ・厚生労働省 e-ヘルスネット
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