更新日:2023年10月02日

整腸剤の効果とは?便秘薬との違いや服用タイミングについて解説

監修:内藤 裕二 先生(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授)

整腸剤の効果とは?便秘薬との違いや服用タイミングについて解説

整腸剤の効果について、みなさんはどれほど理解しているでしょうか。腸の調子が悪いと、多くの方が一度は経験したことがある、便秘や下痢、お腹の張り(膨満感)といった症状が現れます。これらは一時的なものならガマンできても、長引いたり頻繁に繰り返したりすると、不快なだけでなく、ストレスになったり、トイレが気になって仕事も遊びも集中できなくなってしまうなんてことも…。そんな時に服用を考えてみたい整腸剤について、効果や作用の仕組み、服用上の注意点などを解説します。

整腸剤とはどんな薬?

腸内フローラを整えたり、腸管の運動や腸管内の水分量を整えたりする薬

「腸を整える薬(剤)」と書く「整腸剤」。
腸は、消化された食べ物から栄養素や水分を吸収する臓器です。その働きを整えるように作用する薬が整腸剤で、腸内フローラ(次項で解説します)のバランスを整える薬です。主にプロバイオティクスの医薬品、医薬部外品が該当します。
なお、腸の運動性や腸内の水分量を整える薬剤も、広い意味では整腸剤に含まれ、それには生薬(漢方薬)なども該当します。このページでは、前者の「プロバイオティクス」を中心に解説していきます。

プロバイオティクスとは

プロバイオティクスとは、腸内フローラのバランスを改善するための生きた微生物のこと。感染症の治療などに使われる「抗菌薬」と呼ばれる薬が、腸内フローラのバランスを乱してしまうことが多いことの対比として使われています。「共生」を意味する「プロバイオシス(probiosis:proともに,~のために,biosis生きる)」が語源です。
プロバイオティクスは、宿主(人)にとって好ましい腸内環境を維持することに役立つ腸内細菌で、なかでも整腸剤は、よく言われる“善玉菌”(有用菌)とされる菌を体内へ取り込むための薬といえます。その他、「プレバイオティクス」(プロバイオティクスの栄養となるような成分)、「シンバイオティクス」(それら両者をあわせたもの)があります。

腸内フローラ/腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)とは

ヒトの消化管には約1,000種類、100兆個の細菌が存在するといわれていて、それらの集合体を「腸内フローラ」または「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と呼んでいます。

腸内フローラの組成は、消化器疾患(例えば便秘症や過敏性腸症候群などのよくある病気や、炎症性腸疾患などの難治性の病気)だけでなく、喘息、メンタルヘルス、COVID-19を含む感染症など、さまざまな疾患と関連のあることがわかってきていて、近年、医学のあらゆる領域で注目されています。そのような腸内フローラを整えるプロバイオティクスは、健康の維持や疾患の予防・治療に役立ちます。
なお、日本人の腸内フローラは、ゲノム解析という研究によって、5タイプに分類できることがわかってきました。そして、腸内フローラの組成と生命予後(余命)との関連も明らかにされてきています。
最近の話題としては、日本人のCOVID-19感染率や重症化率が欧米に比べて低いことに、日本人の腸内フローラの特徴が関係していることを指摘した研究もあります。日本人の腸内フローラの一般的傾向として、酢酸産生菌や乳酸産生菌が多いようです。

腸内フローラを整えることで期待できること

慢性の下痢や便秘、軟便などの症状改善

整腸剤の「腸を整える」、つまり腸内フローラのバランスを整えるという作用は、下痢や便秘、軟便、腹部膨満感などの消化器症状の改善につながります。このような症状にふだん悩まされることの多い人は、試してみると良いかもしれません。
また、以下のような病気や状態のために、下痢や便秘などの消化器症状が引き起こされている場合もあり、そのような場合は医療機関での治療が欠かせません。ただし、これらの病気や状態に対して、医師により整腸剤が処方されることもあります。

腸内フローラと関連がある疾患や作用

腸内フローラが関与している体への作用

・免疫機能の調整

腸管内で酪酸菌が作り出す酪酸には、免疫機能を調整する働きがあって、それによって感染症や自己免疫疾患(前述の炎症性腸疾患など)のリスクが低下したり、病状の回復、悪化防止に役立つ可能性があります。

・炎症の抑制

酪酸は、炎症を抑えるようにも働き、その働きは動脈硬化などの加齢による変化を抑えることに関係してきます。また、過剰な免疫反応によって炎症が生じてしまう自己免疫疾患に対しても、病状をコントロールするような働きが期待されます。

・腸管粘膜の機能改善

腸内フローラのバランスが良くなると、腸管粘膜の機能が強くなります。腸管粘膜の機能が強くなるとはどういうことかというと、体に良くない物質が体内に侵入するのを防いだり、摂取した食べ物から栄養素をしっかり吸収できるようになることを意味しています。

・抗加齢作用

酪酸菌が作る酪酸は、抗酸化作用ももっています。この抗酸化作用と既にお話しした抗炎症作用などがあいまって、老化現象を抑制する「抗加齢作用」が期待されます。実際に、長寿な人では腸内フローラに酪酸菌が豊富であることも、日本人を対象とした研究結果として報告されています。

腸内フローラと関連がある疾患

・過敏性腸症候群

検査では異常が見つからないのにもかかわらず、下痢または便秘、あるいはその両方が慢性的に続く病気です。原因は不明ですが、精神的ストレスや自律神経のバランスの乱れが、症状の悪化に関係していると考えられています。

・炎症性腸疾患

腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気で、大腸のみに起こる「潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)」と消化管ほぼすべての部分に起こる「クローン病」などが該当します。どちらも下痢や腹痛が長引くことが多く、症状に応じて難病に指定されます。発病の原因は不明ですが、自己免疫疾患(本来は体に侵入する異物を排除するための免疫システムが、自分の体に対して働いてしまう一連の病気)と位置づけられています。

・抗菌薬の副作用

細菌感染症の治療では、抗菌薬が処方されますが、その抗菌薬が腸内細菌を殺してしまうことで腸内フローラのバランスが崩れ、下痢や腹痛などが起きることがあります。

・子どもの急性胃腸炎

ウイルス感染や細菌感染などによって起きる、急性の腹痛や吐き気、嘔吐、下痢などのことで、子どもに多く見られます。例えば、ノロウイルス、ロタウイルスなどの感染。発熱をともなうこともあります。

※これらの疾患は医師の診断が必要です。心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

便秘薬と整腸剤の違いは?

便秘薬は、便秘の治療のための薬です。いくつかのタイプがあって、例えば腸管内の水分を増やして便を柔らかくしたり、腸を刺激し動きをよくすることで、便の排泄を促します。これらの作用は基本的に、便秘という症状に対してのみ有効で、便秘症状に対しては一般的に、服用後の短期間で効果が現れます。
それに対して整腸剤は、前述のように、腸内フローラのバランスを整える薬です。そのような作用の結果として、便秘や下痢、腹部膨満感などの、さまざまな消化器症状を改善します。腸内フローラのバランスは少しずつ改善されていきます。
なお、市販薬の中には、整腸薬のような名称ながらも、便秘薬の成分が含まれているものもあります。もし整腸剤を試してみたいという場合は、改善したい症状を薬剤師や登録販売者に伝えて目的にあったものを選んでもらいましょう。

整腸剤の成分

整腸剤として使用される菌として、酪酸菌、糖化菌、乳酸菌、ビフィズス菌などがあります。

酪酸菌

酪酸菌とは酪酸を作る細菌の総称です。酪酸は弱酸性であり、有害菌(悪玉菌)の発育を抑制します。また、酪酸は大腸の主要なエネルギー源であり、酪酸を利用して上皮細胞で酸素が消費されることで、大腸内がビフィズス菌や他の有用菌(善玉菌)が棲みやすい環境にするのも特徴です。
また、酪酸菌が増えると、腸のぜん動運動(腸の内容物を移動させる運動)が促され、お通じが良くなったりと、おなかに良い働きをもたらします。

ただし、酪酸産生菌だけでは、酪酸を作り出すことが難しいことも、最近わかってきました。

●酪酸菌を効率よく増やす方法について知りたい方はこちら

糖化菌

糖化菌は、消化酵素の一つである「アミラーゼ」を産生し、デンプンを糖に分解する菌です。デンプンを分解できない後述の乳酸菌の発酵を助けるようにも働きます。
酪酸菌や糖化菌、乳酸菌などを単独で培養した場合に比べて、それらを混ぜて培養した時のほうが、菌数が著しく増加することが確認されています(※)。なお、納豆菌も糖化菌の一種です。

  • ※長嶺敬彦:未病と抗老化. 2003;12(1):63-7.

乳酸菌

乳酸菌は主に小腸で糖から乳酸を産生する菌です。腸管内の環境を酸性に保ち、ほかの微生物の繁殖を抑制して、腸管内の腐敗産物を減らすように働きます。また、酪酸菌を増やすといった作用を介して、腸内フローラのバランスを改善します。

ビフィズス菌

ビフィズス菌は乳酸や酢酸を産生する乳酸菌の一種で、主に大腸に存在し、腸内を酸性に傾けて環境を整えます。
腸内フローラのビフィズス菌は、年齢とともに減少するという研究報告があります。また、近年、日本人ではビフィズス菌の量がゼロの人も稀ではなく、便の性状が軟便傾向の人ではビフィズス菌量が少ないという研究結果もあるようです。

整腸剤の服用のポイント

整腸剤の選び方

整腸剤にはさまざまな種類があって、含まれている菌の種類が異なっていたり、一種類の菌ではなく複数の菌が含まれているもの、また善玉菌のほかにビタミンや生薬を含んでいるものなどもあります。そのため自分にあったタイプを薬剤師や登録販売者に相談すると良いでしょう。なお、腸内フローラは個人差が大きいため、効果の感じ方も人によって異なります。
整腸剤の安全性は一般に高く、子どもから高齢者まで服用できるものが多いです。ただし、整腸剤のような名称にもかかわらず、便秘薬の成分が含まれているものもあるので注意しましょう。

・牛乳アレルギーの人は脱脂粉乳を用いていないものを

整腸剤の生菌を培養する際に脱脂粉乳を用いているものもあり、牛乳アレルギーの人は服用するとアレルギー症状(下痢など)が現れる可能性があります。牛乳アレルギーの人は整腸剤を購入する際、薬剤師や登録販売者に相談して、脱脂粉乳を使用していないものを選んでもらいましょう。

・納豆菌製剤は処方薬との飲み合わせに注意

ワルファリンという血液をさらさらにする薬が処方されている患者さんは、納豆を食べると、納豆菌が体内でビタミンKを生成し、その薬の作用が相殺されてしまう可能性があります。そのため、整腸剤に納豆菌が使われていないか確認しましょう。

納豆

整腸剤はいつ飲むのが良い?

整腸剤は食後の服用が基本です。その理由は、食後は食事の影響で胃酸が薄まっているために、整腸剤に含まれている乳酸菌が胃酸によって死んでしまいにくくなり、効果が出やすくなるためです。
ただし、空腹で服用しても全く効果が期待できないわけではないので、もし食後に飲み忘れてしまったら、気づいた時に飲みましょう。

腸内環境の改善に

どれくらいで整腸剤の効果が現れる?

整腸剤は、腸内フローラのバランスを整えることで、ゆっくり穏やかに症状を改善する薬です。約1,000種類、100兆個もあるといわれる腸内フローラのバランスは、整腸剤を飲み始めたからといってすぐには変わりません。例えば、食生活を改善した場合に、腸内フローラが変わり始めるのにも2週間くらいかかるとされています。整腸剤の場合、症状によっては飲み始めてから3日から7日ほどで効果があらわれることもありますが、変化を感じるまでに、2週間から1カ月ほどかかることもあります。
ただし、抗菌薬が処方されたり、急性の感染症で腸内フローラが急に変化するような状態に対して服用する場合には、服用とともに、そのような変化を抑制する働きを期待できます。

・効果の現れ方には個人差がある

整腸剤の菌は、生きた状態である程度は腸管内で生存しますが、腸管に定着はしないとされています。また、腸内フローラは、食生活、とくに食物繊維や塩分・糖分の摂取量、年齢、運動習慣、ふだん服用している薬剤、ストレスなど、さまざまな影響を受けていて、個人差が極めて大きいことが知られています。そのため同じ整腸剤でも、効果のある人とあまりない人がいるのも事実です。前段でお話ししたように、効き始めるのに1カ月程度かかることがあるので、継続的に服用してみましょう。
しばらく続けてみて効果を感じられなければ、薬剤師や登録販売者に相談してみてください。

しばらく続けても効果が不十分なら医師に相談を

お腹の中の環境を穏やかに整えてくれる整腸剤について解説してきました。多忙で食事にあまり気を使っていられず、ストレスが多い生活を送っている人などは、腸に負担がかかっているかもしれません。気になる消化器症状があれば、整腸剤を試してみると良いでしょう。とはいえ、しばらく続けても症状が改善しなかったり、悪化していくような場合には、医療機関で診察を受けましょう。

[参考文献]
  • レジデントノート22(15),2021「研修医が知っておきたい整腸薬・止痢薬の使い方」
  • RP+21(2),2022「整腸剤の役割と使用場面」
  • 「酪酸菌を増やせば健康・長寿になれる」内藤裕二(著)
  • 診断と治療110(7),2022「腸内細菌叢と消化管感染症」内藤裕二(著)
  • 日本臨床81(2),2023「高齢者の腸内細菌叢とサルコペニア」内藤裕二(著)

監修医プロフィール

内藤裕二先生

京都府立医科大学大学院
医学研究科 教授
内藤 裕二 先生

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