更新日:2026年6月29日
整腸剤の効果とは?便秘薬との違いや服用タイミングについて解説
監修:内藤 裕二 先生(京都府立医科大学大学院 医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授/消化器内科学 特任教授/一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長)
この記事でわかること
- 整腸剤によって腸内フローラが整うことで、便秘や軟便、おなかの張り(腹部膨満感)など、幅広い腸の不調に対する効果が期待できる
- 整腸剤と便秘薬は、腸内フローラを整えるか、排便を促すかという、目的と作用の仕方(効き方)に違いがある
- 整腸剤に含まれることのある酪酸菌・糖化菌・乳酸菌・ビフィズス菌は、それぞれ異なる役割で腸内環境を改善する
- 整腸剤は継続服用が重要であり、効果が出るまでに個人差があることを理解した上で、用法・用量を守って服用することが大切
目次
整腸剤の効果は、腸内フローラのバランスを整えることで腸本来の働きをサポートし、便秘や軟便、おなかの張り(腹部膨満感)などのおなかの不調の改善を穏やかに後押しする点にあります。腸内環境の乱れは、こうした身近なおなかの不調と関係することが報告されています。
この記事では、整腸剤の基本的なメカニズムや期待できる効果、一般的な整腸剤に含まれる成分の役割、便秘薬との違い、効果が現れるまでの目安や正しい服用のポイントまでを医師監修のもとわかりやすく解説します。おなかの不調に悩んでいる方や、腸内環境を見直したい方、整腸剤の服用を検討している方はぜひ参考にしてください。
整腸剤とは、腸内フローラのバランスを整える薬
整腸剤とは、腸内フローラ(次項で解説します)のバランスを整え、腸本来の働きをサポートし、おなかの調子を整えることを目的とした薬剤の総称です。腸の主な働きは、消化された食べ物から栄養素や水分を吸収することです。
整腸剤には、主にプロバイオティクス(乳酸菌や酪酸菌などの「善玉菌(有用菌)」※以下、善玉菌)を有効成分とする医薬品や医薬部外品が含まれます。また、腸の運動性や腸管内の水分量を調整することを目的とした薬剤や、生薬(漢方薬)が用いられるケースもあり、それぞれの作用や使われ方は異なります。
この記事では、前者の「プロバイオティクスを有効成分とする整腸剤」を中心に解説していきます。
「プロバイオティクス」を有効成分とする整腸剤とは
「プロバイオティクス」とは、適切な量を摂取することで、宿主(人)にとって好ましい腸内環境を維持することに役立つと考えられている生きた微生物のこと。感染症の治療などに使われる「抗菌薬」と呼ばれる薬が、腸内フローラのバランスを乱してしまうことが多いことの対比として使われています。「共生」を意味する「プロバイオシス(probiosis:proともに,~のために,biosis生きる)」が語源です。
整腸剤は、こうしたプロバイオティクスの考え方に基づき、いわゆる“善玉菌”とされる菌を有効成分として用いた医薬品といえます。
プロバイオティクスと一緒に使われることの多い用語としては、「プレバイオティクス」(食物繊維などのプロバイオティクスの栄養となるような成分)、「シンバイオティクス」(プロバイオティクスとプレバイオティクスの両者をあわせたもの)などがあります。
整腸剤が作用する腸内フローラ/腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)とは
腸内フローラ/腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)とは
ヒトの消化管には約1,000種類、100兆個もの細菌が存在するといわれていて、それらの集合体を「腸内フローラ」または「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と呼んでいます。
腸内フローラの組成は、消化器疾患(例えば便秘症や過敏性腸症候群などのよくある病気や、炎症性腸疾患などの難治性の病気)だけでなく、喘息、メンタルヘルス、COVID-19を含む感染症など、さまざまな疾患と関連のあることがわかってきていて、近年、医学のあらゆる領域で注目されています。そのような腸内フローラを整えるプロバイオティクスは、健康の維持や疾患の予防・治療に役立ちます。
なお、日本人の腸内フローラは、ゲノム解析という研究によって、5タイプに分類できることがわかってきました。そして、腸内フローラの組成と生命予後(余命)との関連も明らかにされてきています。
最近の話題としては、日本人のCOVID-19感染率や重症化率が欧米に比べて低いことに、日本人の腸内フローラの特徴が関係していることを指摘した研究もあります。日本人の腸内フローラの一般的傾向として、酢酸産生菌や乳酸産生菌が多いようです。
腸内フローラが関与している、体への主な作用4つ
ここでは、腸内フローラが関与している体への主な作用を紹介します。
なお、ここで紹介する内容は、特定の製品の効能・効果を示すものではありません。
免疫機能の調整
腸内で酪酸菌が作り出す酪酸は、腸管免疫において「免疫の働きを落ち着かせる役割をもつ細胞(制御性T細胞)」の働きに関与することが分かってきました。こうした働きにより、腸内の炎症が起こりにくい環境づくりに役立つ可能性があると考えられています。
炎症の抑制
酪酸は、炎症に関わる免疫反応を調整する物質としても注目されています。動脈硬化など加齢に伴って炎症が関わると考えられている変化との関連が研究されているほか、免疫の働きが過剰になることで炎症が長く続くような状態についても、腸内環境と免疫との関係を探る研究分野で注目されています。
腸管粘膜の機能改善
腸内フローラのバランスが保たれることは、腸管粘膜が本来もつ「バリア機能」を健やかにするうえでも重要と考えられています。腸管粘膜のバリア機能(大腸のバリア機能)とは、体に好ましくない物質や微生物が体内へ入り込むのを防ぎながら、必要な栄養素を効率よく吸収する働きのことです。
抗加齢作用
酪酸菌が産生する酪酸は、炎症や酸化ストレスに関連する免疫反応を穏やかにする働きがあることが、研究から示唆されています。
こうした作用が重なることで、加齢に伴う変化が起こりにくい体内環境づくりに関与する可能性があると考えられています。
実際に、長寿の方では腸内フローラの多様性が高く、酪酸を産生する細菌を含む菌群が多いことが、日本人を対象とした研究を含めて報告されています。
腸内フローラが関与している主な疾患や状態
ここでは、腸内フローラとの関連が研究されている代表例を紹介します。
なお、これらの疾患は医師の診断が必要です。心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群は、内視鏡検査などで明らかな異常が見つからないにもかかわらず、腹痛や下痢、便秘、またはその両方が慢性的に続く消化器疾患です。近年の研究では、脳と腸の相互作用(腸脳相関)や、腸内フローラのバランスの乱れが、症状の出現に関与していることが示唆されています。精神的ストレスや自律神経の乱れも、症状の悪化に関係していると考えられています。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
炎症性腸疾患は、腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる疾患の総称で、大腸のみに起こる「潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)」と、口から肛門まで広範囲に炎症が及ぶ「クローン病」などが含まれます。どちらも下痢や腹痛が長引くことが多く、難病に指定されます。
これらの疾患では、免疫の異常な反応に加え、腸内フローラの構成や多様性の変化が、炎症の持続や病態に関与していることが報告されています。
抗菌薬の副作用
細菌感染症の治療に用いられる抗菌薬は、原因菌だけでなく腸内細菌にも影響を及ぼします。その結果、腸内フローラのバランスが一時的に乱れて下痢や腹痛などの症状が起こることがあります。
子どもの急性胃腸炎
子どもに多くみられる急性胃腸炎は、ウイルスや細菌感染などによって起こり、急な腹痛や吐き気、嘔吐、下痢などの症状がみられます。例えば、ノロウイルス、ロタウイルスなどの感染で、発熱をともなうこともあります。特に乳幼児期は腸内フローラが未熟なため、症状が出やすいと考えられています。
整腸剤と便秘薬の違いは、目的と作用の仕方(効き方)にある
ここでは、整腸剤と便秘薬の違いについて解説します。
便秘薬とは、便秘の症状を和らげるための薬
便秘薬は、便秘の症状を和らげる目的で使用される薬の総称です。いくつかのタイプがあって、例えば腸管内の水分を増やして便を柔らかくするものや、腸の動きを促すことで、排便をサポートするものがあります。
これらの作用は、基本的に便秘という症状に対して作用するもので、服用後、比較的短期間で効果が現れるのが特徴です。
整腸剤と便秘薬の違い
便秘薬は便秘という症状に直接働きかけ、排便を促すことを目的とした薬であるのに対し、整腸剤は、前述のように、腸内フローラのバランスを整えることを目的とした薬です。そのような作用の結果として、便秘や下痢、腹部膨満感などの、さまざまな消化器症状を改善します。腸内フローラのバランスは時間をかけて変化していくため、整腸剤は継続的な服用により効果が現れるのが特徴です。
このように、整腸剤と便秘薬には、服用する目的や、体への作用の仕方(効き方)が異なると言えます。
なお、市販薬の中には、整腸剤のような名称で販売されていても、便秘薬の成分が含まれているものもあります。整腸剤を試してみたい場合は、改善したい症状や困りごとを薬剤師や登録販売者に伝え、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
整腸剤に使用される主な成分4つ
整腸剤として使用される菌として、酪酸菌、糖化菌、乳酸菌、ビフィズス菌などがあります。それぞれの特徴や作用について解説します。
酪酸菌
酪酸菌とは酪酸を作る細菌の総称です。酪酸は弱酸性であり、「悪玉菌(有害菌)」(※以下、悪玉菌)の発育を抑制します。また、酪酸は大腸の主要なエネルギー源であり、酪酸を利用して上皮細胞で酸素が消費されることで、大腸内がビフィズス菌や他の善玉菌が棲みやすい環境にするのも特徴です。
また、酪酸菌が増えると、腸のぜん動運動(腸の内容物を先へ先へと運ぶための運動)が促され、お通じが良くなったりと、おなかに良い働きをもたらします。
ただし、酪酸産生菌だけでは、酪酸を作り出すことが難しいことも、最近わかってきました。
糖化菌
糖化菌は、消化酵素の一つである「アミラーゼ」を産生し、デンプンを糖に分解する菌です。デンプンを分解できない後述の乳酸菌の発酵を助けるようにも働きます。
酪酸菌や糖化菌、乳酸菌などを単独で培養した場合に比べて、それらを混ぜて培養した時のほうが、菌数が著しく増加することが確認されています(※)。なお、納豆菌も糖化菌の一種です。
- ※長嶺敬彦:未病と抗老化. 2003;12(1):63-7.
乳酸菌
乳酸菌は主に小腸で糖から乳酸を産生する菌です。腸管内の環境を酸性に保ち、ほかの微生物の繁殖を抑制して、腸管内の腐敗産物を減らすように働きます。また、酪酸菌を増やすといった作用を介して、腸内フローラのバランスを改善します。
ビフィズス菌
ビフィズス菌は乳酸や酢酸を産生する乳酸菌の一種で、主に大腸に存在し、腸内を酸性に傾けて環境を整えます。
腸内フローラのビフィズス菌は、年齢とともに減少するという研究報告があります。また、近年、日本人ではビフィズス菌の量がゼロの人も稀ではなく、便の性状が軟便傾向の人ではビフィズス菌量が少ないという研究結果もあるようです。
整腸剤の服用のポイント、選び方
整腸剤にはさまざまな種類があり、配合されている菌の種類や組み合わせは製品ごとに異なります。例えば、乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌など一種類の菌のみを含むものもあれば、複数の菌を組み合わせたもの、さらに善玉菌に加えてビタミンや生薬などを配合しているものもあります。そのため、症状や服用のしやすさなどをふまえ、自分にあったタイプの整腸剤を選ぶことが大切です。腸内フローラは個人差が大きいため、効果の感じ方も人によって異なります。迷ったときは、薬剤師や登録販売者に相談しながら選ぶと良いでしょう。
整腸剤の安全性は一般に高く、子どもから高齢者まで服用できる製品が多いことも特徴の一つです。ただし、市販薬のなかには「整腸剤」のような名称であっても、便秘薬の成分が含まれているものもあります。成分表示を確認し、不安がある場合は専門家に相談しましょう。
牛乳アレルギーがある方は、脱脂粉乳を使用していない整腸剤を
整腸剤のなかには、生菌を培養する過程で脱脂粉乳(牛乳由来成分)を使用している製品もあります。脱脂粉乳には牛乳由来のたんぱく質(カゼインなど)が含まれるため、牛乳アレルギーの方が服用すると下痢や腹痛などのアレルギー症状が現れる可能性があります。牛乳アレルギーの方が整腸剤を購入する際、薬剤師や登録販売者に相談して、脱脂粉乳を使用していないものを選んでもらうようにしましょう。
納豆菌製剤は処方薬との飲み合わせに注意
納豆菌製剤を服用している方は、お薬との飲み合わせに注意する必要があります。「ワルファリン」という血液をさらさらにする薬が処方されている場合、納豆を食べると、納豆菌が体内でビタミンKを生成し、その薬の作用が相殺されてしまう可能性があります。そのため、整腸剤に納豆菌が使われていないか確認しましょう。
整腸剤に関するよくある質問
整腸剤はいつ飲むのが良い?
整腸剤は食後の服用が基本です。その理由は、食後は食事の影響で胃酸が薄まっているために、整腸剤に含まれている乳酸菌が胃酸によって死んでしまいにくくなり、効果が出やすくなるためです。
用法・用量を守って、正しく使用しましょう。
整腸剤の効果はどれくらいで現れる?
整腸剤の効果が現れるまでの期間には個人差があります。飲み始めてから3日から7日ほどで効果があらわれることもありますが、変化を感じるまでに、2週間から1カ月ほどかかることもあります。
整腸剤は、腸内フローラのバランスを整えることで、穏やかに症状を改善する薬です。人の腸内には、約1,000種類、100兆個もの腸内細菌が存在するといわれており、これらが集まって腸内フローラを形成しています。このバランスは、整腸剤を飲み始めたからといって、短期間で大きく変化するものではありません。実際に、食生活の改善など生活習慣の変化によって、腸内フローラに変化が現れ始めるまでにも、一定の期間(およそ2週間程度)が必要であることが報告されています。整腸剤も同様に、毎日の生活習慣とあわせて継続的に取り入れることが大切と考えられます。
ただし、抗菌薬が処方されたり、急性の感染症で腸内フローラが急に変化するような状態に対して服用する場合には、服用とともに、そのような変化を抑制する働きを期待できます。
整腸剤の効果の現れ方に個人差があるのはなぜ?
整腸剤の効果の現れ方に個人差がみられる理由は、腸内フローラが人それぞれ異なり、さまざまな要因の影響を受けているためです。
腸内フローラは、日々の食生活(特に食物繊維や塩分・糖分の摂取量)をはじめ、年齢、運動習慣、ふだん服用している薬剤、ストレスなどといった多くの要素によって変化することが知られています。そのため、同じ整腸剤を服用しても、効果の感じ方や現れるまでの時間には差が生じると考えられています。
また、整腸剤に含まれる菌は、生きた状態で腸管内を通過し、腸内に長期的に定着はしないとされています。外から摂取した菌は一時的に働いたのち、徐々に排出されるとされています。
このような特性から、生活習慣とあわせて続けていくことが大切です。前段でお話ししたように、効果を実感するまでに服用後すぐに効果を実感される方もいれば、1週間程度で実感されるケースもあるので、継続的に服用してみましょう。
整腸剤の服用をしばらく続けても効果が不十分なら、医師に相談を
この記事では、おなかの中の環境を穏やかに整えてくれる整腸剤について解説してきました。多忙で食事にあまり気を使っていられず、ストレスが多い生活を送っている人などは、腸に負担がかかっているかもしれません。気になる消化器症状があれば、整腸剤を試してみると良いでしょう。とはいえ、しばらく続けても変化を感じにくい場合や気になる症状がある場合は、医療機関で診察を受けましょう。
- [参考文献]
-
- レジデントノート22(15),2021「研修医が知っておきたい整腸薬・止痢薬の使い方」
- Rp+.レシピプラス 21(2),2022「整腸剤の役割と使用場面」
- 「酪酸菌を増やせば健康・長寿になれる」内藤裕二(著)
- 診断と治療110(7),2022「腸内細菌叢と消化管感染症」内藤裕二(著)
- 日本臨床81(2),2023「高齢者の腸内細菌叢とサルコペニア」内藤裕二(著)
監修医プロフィール
内藤 裕二 先生
京都府立医科大学大学院 医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授/消化器内科学 特任教授/一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長
消化器専門医として最新医学に精通し各地で講演も行っている。消化器病学や消化器内視鏡学、生活習慣病の他、健康長寿や抗加齢医学、腸内フローラや酪酸菌研究も専門としており、「京丹後長寿コホート研究」で腸内フローラ解析に携わっている。酪酸菌と健康長寿の関係などの研究をはじめ、長年腸内細菌を研究し続けている本領域の第一人者。
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