更新日:2025年2月27日
便秘解消におすすめの食べ物とは?便秘の原因と食生活の注意点についても紹介
監修:内藤 裕二 先生(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授/一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長/日本潰瘍学会理事長/日本酸化ストレス学会副理事長)
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便秘を解消するためには、どのような食べ物を摂取すると良いのでしょうか。便秘にはさまざまな原因がありますが、生活習慣や食生活の偏りによる腸内環境の悪化もその1つと考えられます。便秘の状態が長く続くと、悪玉菌が増加して、さらに腸内環境が悪化するという悪循環に。一方、食物繊維や発酵食品など、腸の働きを良くする食べ物を積極的に摂取すると、腸内フローラ(人の腸内に棲みつく、約1,000種類・100兆個の腸内細菌の集まりのこと)のバランスが整い、便秘の解消につながりやすくなります。今回は、便秘になる原因や、便秘解消におすすめの食べ物、食生活における注意点について詳しく紹介します。
便秘になる原因とは?
便秘は、医学的には「本来排泄すべき糞便が大腸に滞ることによる兎糞状態・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な努責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義されています。排便が困難に感じたり、自発的な排便回数が週3回未満の場合に「便秘症」と診断されることが多いです。
便秘になる主な原因としては、病気や薬剤の影響、加齢、ストレス、運動不足、睡眠不足、生活リズムの乱れ、偏った食生活などが挙げられます。特に、偏った食生活を送っていると、腸内環境が悪化しやすくなるため、注意が必要です。腸内環境が悪化すると、それに影響されて消化器官の運動が鈍くなり、便秘や下痢などの不調を引き起こすこともあります。
また、便秘の状態が長く続くと、便に含まれている水分の再吸収が進み、便が固くなることで、さらに排便が難しくなることも。便秘がひどくなると、「悪玉菌(有害菌)」(※以下、悪玉菌)が増加し、さらに腸内環境が悪化するという悪循環が生まれてしまいます。
腸内環境を整えるには
私たちの腸内には、「腸内細菌」と呼ばれる細菌が、種類ごとに集まって腸の壁に棲みついています。その様子がお花畑のように見えることから、一般的に「腸内フローラ(英語でflora:植物相、植生)」と呼ばれています。
腸内細菌は、腸内に約1,000種類・100兆個存在し、体に良い影響をもたらす「善玉菌(有用菌)」(※以下、善玉菌)、体に悪い影響をもたらす「悪玉菌」、また善玉菌と悪玉菌のどちらにも属さず、腸内の状態によって善玉菌か悪玉菌のどちらか優勢になった方と同じ働きをすることのある「日和見(ひよりみ)菌」の3種類に分けることができます。
この3種類のバランスが、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7に近づくと理想的です。しかし、食物繊維の摂取量の不足や偏った食生活によって悪玉菌が増加すると、このバランスが崩れてしまうことに。慢性便秘症患者の腸内フローラのバランスは、健康な人と比較して、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が低下しているという報告もあります。
腸内における善玉菌を増やし、腸内環境を整えるには、食事内容を見直して、善玉菌を増やすことが大切です。具体的には、乳酸菌やビフィズス菌など、善玉菌そのものである「プロバイオティクス」を含む食べ物を摂取する方法や、食物繊維など腸内の善玉菌のエサとなる「プレバイオティクス」を摂取して、善玉菌を増やす方法などがあります。
便秘解消におすすめの食べ物は?
それでは、便秘を解消するためにはどのような食べ物を摂取すれば良いのでしょうか。例えば、食物繊維を多く含む食べ物は、便のカサを増やしたり、便を柔らかくしたりする働きがあり、便秘の解消が期待できるとされています。
また、乳酸菌、納豆菌といった善玉菌を含む発酵食品や、善玉菌のエサとなるオリゴ糖を多く含む食べ物は、腸内環境を改善する働きがあるため、上手に摂取すると、便秘の解消につながります。
さらに、不飽和脂肪酸を多く含む良質な油は、便の滑りを良くする働きがあるので、こちらも積極的に摂取すると良いでしょう。
ここからは、このような便秘解消におすすめの食べ物について、それぞれ詳しく紹介していきます。
食物繊維を多く含む食べ物
食物繊維は、食物中に含まれている、人の消化酵素で消化することのできない物質のことです。食物繊維には善玉菌を増やす作用があるほか、便を柔らかくし、水分を吸収して便の容積を増やす作用があると考えられています。便の容積が増えると、大腸が刺激され、排便がスムーズになります。また、有害物質を吸着し、便と一緒に体の外に排出するため、腸をきれいにして大腸がんのリスクを減らす働きも期待できるでしょう。
食物繊維を多く含む食べ物の例は下記の通りです。特に大豆は水溶性成分が多く、腸内で発酵しやすい「高発酵性食物繊維」を含んでいるため、便秘の解消に期待できることが近年注目されています。
【食物繊維を多く含む食べ物の例】
- ・さつまいも
- ・グリーンピース
- ・昆布
- ・大豆
- ・ぶなしめじ
・食物繊維の測定法が変わった?
食物繊維の成分値は、2017年まで「プロスキー変法」を用いて測定されていましたが、2018年からは「AOAC2011.25法」を用いて測定されることが多くなっています。
この変更により、「不溶性食物繊維」と「高分子量水溶性食物繊維」だけでなく、従来のプロスキー変法では測定できなかった「低分子量水溶性食物繊維」と「難消化性でん粉」の全ても測定されるようになりました。また、この測定法の変更により、食品によっては従来の食物繊維総量から数値が変わったものもあります。
※この記事では、「AOAC2011.25法」を用いて測定された食物繊維の成分値を参考に、食物繊維を多く含む食べ物を紹介しています。
オリゴ糖を多く含む食べ物
オリゴ糖は糖質の一種で、「少糖」とも呼ばれています。代表的なものに、砂糖を原料に酵素を作用させて作られる「フラクトオリゴ糖」や、大豆から天然成分を抽出・分離させた「大豆オリゴ糖」、乳糖にβ-ガラクトシダーゼを作用させた「ガラクトオリゴ糖」などが挙げられます。
オリゴ糖の中でも、フラクトオリゴ糖などの難消化性のものは、胃や小腸で分解されずにそのまま大腸に届き、善玉菌のエサになります。その結果、腸内環境が整い、便秘解消につながると考えられています。
なお、上記の「AOAC2011.25法」では、オリゴ糖も食物繊維として測定されています。
【オリゴ糖を多く含む食べ物の例】
- ・ごぼう
- ・たまねぎ
- ・ニンニク
- ・バナナ
- ・はちみつ
発酵食品
発酵食品には、乳酸菌や納豆菌など、善玉菌(プロバイオティクス)が多く含まれています。これらのプロバイオティクスを摂取すると、善玉菌が増え、腸内環境が整うため、便秘解消が期待できると考えられています。
【発酵食品の例】
- ・ヨーグルト
- ・納豆
- ・漬物
- ・キムチ
不飽和脂肪酸を多く含む食べ物
脂肪の構成要素である脂肪酸は、分子の構造的な違いから、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類されます。そのうち、植物や魚の脂に多く含まれる不飽和脂肪酸は、腸内で便の滑りを良くする働きがあり、便秘の解消が期待できるとされています。
【不飽和脂肪酸を含む食べ物の例】
- ・さんま
- ・えごま油
- ・オリーブ油
- ・ツナ缶
- ・アーモンド
便秘を解消するには?食生活で気をつけたいポイント
便秘を解消するためには、食生活を改善することが大切です。タンパク質や脂質を中心にした食生活を送っている場合、腸内で悪玉菌が増えてしまい、便秘を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。
また、こまめな水分補給も忘れないようにしましょう。水分を摂ると便が柔らかくなり、排便がスムーズになります。
食事の時間が不規則になりがちな人は、しっかりと朝食を摂るよう心がけましょう。人の体は、もともと朝に大腸の大きなぜん動運動(腸の内容物を先へ先へと運ぶための運動)が起こるようになっています。また、朝食を摂ると、体内リズムが整い、胃や腸が刺激されるので、排便反射が起こりやすくなるとされています。排便反射とは、便がやってきたという情報が脳に伝わり、便を送り出す働きが強まること。朝食後にトイレに座る習慣をつけると排便習慣が整いやすくなるでしょう。

【コラム】便秘解消につながる!? 話題の腸活法「シンバイオティクス」とは
「シンバイオティクス」とは、善玉菌そのもの(プロバイオティクス)が含まれる食べ物と、善玉菌のエサとなる食品成分(プレバイオティクス)が含まれる食べ物を一緒に摂取すること。プロバイオティクスだけを摂取するよりも善玉菌が増えやすくなるため、便秘の解消に役立つと近年注目されています。普段の食事でも、納豆やキムチ、ヨーグルトなどの発酵食品には、野菜や海藻、フルーツなどの食物繊維を組み合わせるように意識してみましょう。
善玉菌というと乳酸菌やビフィズス菌などが有名ですが、その他にも「酪酸菌」という菌があります。酪酸菌が産生する短鎖脂肪酸のひとつである「酪酸」には、ぜん動運動を促進し、便通を良くする働きがあることが分かっています。ぜひ積極的に摂取したいところですが、酪酸菌は、ぬか漬けや臭豆腐など、限られた食べ物にしか含まれておらず、普段の食事に取り入れにくいところが難点。酪酸菌を配合した整腸剤の摂取を続けることで、酪酸菌を腸内に定着させるのもひとつの方法です。
便秘解消に期待できる食べ物を取り入れて、腸内環境を整えよう
善玉菌のエサとなる食物繊維や、善玉菌を含む発酵食品などを食事に取り入れると、腸内環境が整い、便秘の解消につながります。便秘に悩んでいる方は、今回紹介した食べ物を日頃の食生活の中に取り入れてみてください。食事からこまめに善玉菌を摂取するのが難しい場合は、整腸剤を活用するのもおすすめです。また便秘の原因には、食生活だけではなく、生活習慣も関わっています。睡眠をしっかりとり、適度に運動する習慣をつけるなど、生活リズム全体を整えるように意識すると良いでしょう。
- [参考文献]
-
- ・内外出版社「100年腸 : 最強食物繊維があらゆる不調を改善!」,2024,内藤裕二/著
- ・南江堂「便通異常症診療ガイドライン2023」,2023年
- ・文部科学省「食品成分データベース」
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl - ・厚生労働省 e-ヘルスネット
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