更新日:2026年5月28日
乳酸菌の効果とは?摂取方法や乳酸菌を含む食品、ビフィズス菌との違いを紹介
監修:内藤 裕二 先生(京都府立医科大学大学院 医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授/消化器内科学 特任教授/一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長)
この記事でわかること
- 乳酸菌は善玉菌の代表的な存在の一つで、腸内環境を弱酸性にすることで腸内フローラのバランスを整える
- 乳酸菌とビフィズス菌の主な違いは、生息できる環境、棲みつく場所、産生するもの
- 乳酸菌は生きた状態だけでなく、死菌になった状態でも、ほかの善玉菌のエサになることで腸内フローラのバランス維持に役立っている
- 乳酸菌の効果を高めるには、食生活・運動・睡眠・ストレス管理など生活習慣全体が重要
目次
「乳酸菌は体に良い」とよく耳にするものの、実際にどのような効果や働きがあり、どれくらい摂ればいいのかまでは、意外と知られていないかもしれません。
乳酸菌の摂取は、便秘や下痢、腹部の不快感といったおなかの悩みのほか、近年では腸内環境を介して免疫のバランスを整える働きにも注目が集まっており、免疫細胞の働きや健康維持との関係も注目されています。
この記事では、乳酸菌の基本的な働きから腸内フローラとの関係、期待できる効果、一日に必要な摂取量、乳酸菌を含む食品や効果的な摂り方までを医師監修のもとわかりやすく解説します。「乳酸菌は自分の症状や目的に合っているのか」「毎日の生活でどう取り入れればいいのか」を知りたい方はぜひ参考にしてください。
乳酸菌とは?
乳酸菌とは、発酵によって糖類から多量の乳酸を産生する菌のことで、1種類の菌を指すのではなく、さまざまなタイプがあります。それぞれの乳酸菌によって、発酵・産生されるものが異なり、食品としての働きや味、風味なども違います。
腸内細菌は、健康の維持や向上にとって都合の良い「善玉菌(有用菌)」(※以下、善玉菌)と、その反対の「悪玉菌(有害菌)」(※以下、悪玉菌)、そして、ふだんはどっちつかずの「日和見(ひよりみ)菌」という3つの種類に大別できます。乳酸菌は、ビフィズス菌・酪酸菌と並んで、善玉菌の代表的な存在です。
乳酸菌とビフィズス菌の違い
乳酸菌とビフィズス菌は、どちらも善玉菌に該当する腸内細菌です。しかし、異なる特徴を持っています。
| 乳酸菌 | ビフィズス菌 | |
|---|---|---|
| 生息できる環境 | 酸素がある環境・少ない環境のどちらでも比較的生息しやすい | 酸素が少ない環境を好む |
| ヒトの体内で棲みつく場所 | 小腸下部~大腸 | 大腸に多く存在 |
| 産生するもの | 乳酸 | 乳酸・酢酸 |
乳酸菌は、酸素がある環境でもない環境でも生息可能な菌で、主に小腸下部~大腸に存在しています。一方、ビフィズス菌は、酸素のある環境が苦手な菌です。小腸の中には酸素が比較的多いためにビフィズス菌は生息できず、酸素濃度の低い大腸に存在しています。
また、腸の中で、乳酸菌は乳酸を産生し、ビフィズス菌は乳酸と酢酸を産生するという違いもあります。
乳酸菌に期待できる4つの効果
ここでは、乳酸菌に期待できる主な効果を4つ紹介します。
腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを整える
乳酸菌の代表的な効果として、腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを整えることが挙げられます。
ヒトの消化管には、約1,000種類、100兆個の細菌が存在していて、それをすべて合わせると、重さは1~2kg以上にもなるといわれています。それらの集合体のことを「腸内フローラ」または「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と呼んでいます。
先ほどお示ししたように、腸内細菌は、善玉菌と悪玉菌、日和見菌に分けられ、それらの理想的なバランスは2:1:7とされています。その3者のバランスが崩れて悪玉菌が優勢になると、健康に悪影響が生じてきてしまいます。それに対して善玉菌の代表的な存在である乳酸菌は、腸内フローラのバランスが崩れないように働いています。
その主なメカニズムは、腸の中で糖を分解して乳酸を作り出して、腸内環境を弱酸性にすることです。悪玉菌はアルカリ性の環境を好むため、乳酸菌が優勢な酸性の環境下では増殖できません。
酪酸菌を増やす
乳酸菌は、整腸作用に重要な「酪酸菌」を増やす効果も期待できます。
酪酸菌は、乳酸菌やビフィズス菌と同じ善玉菌の一つで、大腸で増殖して主に酪酸を産生する菌です。腸内の腐敗菌に対抗するように働き、ほかの善玉菌と共生しながら整腸作用を発揮しています。
乳酸菌は、乳酸菌が作る乳酸によって腸内が酸性になることで、ほかの善玉菌が増殖しやすくなるという役割も果たしています。そして、その影響は酪酸菌にも及んでいます。実際、乳酸菌や酪酸菌などを単独で培養するよりも、それらを混ぜて培養すると、菌数が著しく増加することが確認されています。(※)
また、口から体内に入った乳酸菌は、胃酸によって多くが死滅し、腸に届くときには死菌になっていることが多いのですが、死菌もまた、ほかの善玉菌のエサとなることなどで、腸内バランスの維持に役立っています。また、死菌となってもその菌体の成分がヒトの免疫や炎症反応に影響することが知られています。
一方で、胃酸に強く生きたまま腸に届く乳酸菌もあります。乳酸菌配合の整腸剤やサプリメント、ヨーグルトなどを購入する際には「生きたまま腸に届く」といった記載のあるものを選ぶと良いでしょう。
※日本医事新報 No.4953「整腸剤の種類と作用の違い」
便秘を予防する
乳酸菌には腸のぜん動運動(腸の内容物を先へ先へと運ぶための運動)を促して、便秘を予防する整腸作用もあります。便秘になると腸の中で悪玉菌が増えやすくなるので、便秘を予防すること自体が腸内環境を整えることにつながるといえるでしょう。
ビタミンB群・ビタミンKを産生する
近年、乳酸菌などの善玉菌は、体内でのビタミンB群やビタミンKの産生にも関わっていることがわかってきました。ビタミンは体の調子を整えるなどさまざまな働きがあることが知られていますが、ビタミンB群やビタミンKは体内で生成できない栄養素(ビタミンB群のうちのナイアシンを除く)であるため、この善玉菌の働きにも注目が集まっています。
さらに、消化吸収の促進や免疫機能の調節にも関係していることや、腸の内壁の粘液層によるバリア機能を高めることによって、感染症や炎症を抑制するようにも働くことがわかっています。
一日に必要な乳酸菌の摂取量
一日に必要な乳酸菌の摂取量は、1日約100億個程度といわれています。
乳酸菌の摂取量について、例えば国立健康・栄養研究所のサイト内には、「これまでにいくつかの菌株で整腸作用が調べられ科学的に証明されています。こうした乳酸菌の場合でも1日約100億個程度の摂取が必要なようです。市販の発酵乳中には1mLあたり1,000万個の乳酸菌を含めることが規定されています。(中略)また、1日だけでなく、毎日摂取する必要があります。」といった記載が見られます。
腸内の細菌の数は、100兆個規模といわれていて、善玉菌、悪玉菌、日和見菌が勢力を競い合っています。この勢力図に変化が生じるほどの影響力を与えるには、毎日、相当の善玉菌を摂取して、腸内の善玉菌を加勢する必要があると考えられます。
乳酸菌を多く含む食品例
乳酸菌を多く含む食品例としては、以下のようなものが挙げられます。
- ・ヨーグルト
- ・チーズ
- ・納豆
- ・漬物
- ・乳酸菌飲料
乳酸菌と聞くとヨーグルト、チーズなどの発酵食品がまず頭に思い浮かぶ人が多いでしょう。
これらは欧米諸国の食材のようなイメージがありますが、実際には家畜の乳を用いた食品は世界各地で古くから食べられていて、日本でも奈良時代から平安時代には、現在のバターに似た「醍醐(だいご)」などが作られていたようです。ところが発酵乳製品は日本の食文化としてはあまり定着せず、代わりに味噌や醤油、ぬか漬けなどの植物性の発酵食品が好まれるようになりました。これらは現在ではユネスコ無形文化遺産である「和食」の大切な一部であって、かつ乳酸菌の豊富な食材となっています。
そのほかに、日本の食品の中では、納豆や漬物などが、乳酸菌の多い食品として挙げられます。
また、飲み物としては、乳酸菌を多く含む「乳酸菌飲料」と呼ばれる飲料が販売されています。
乳酸菌の効果的な摂取方法3選
ここでは、乳酸菌の効果的な摂取方法を3つ紹介します。
食物繊維と一緒に摂る
乳酸菌は、栄養(エサ)となる食物繊維と一緒に摂ることで、両者の相互的な効果が期待できます。
かつて、消化されにくく吸収されない食物繊維は、食べ物の“かす”のように扱われていました。ところが、現在では腸内の環境を整える重要な役割をもつことがわかっていて、「第6の栄養素」として位置づけられています。ちなみに食物繊維以外の5大栄養素は、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルです。
乳酸菌との関連では、食物繊維が腸の中で乳酸菌の栄養(エサ)として活用されるという役割を果たしています。また、食物繊維は便秘を改善し、腸内で悪玉菌が発生しやすい状況を防ぐよう働いてくれます。
食物繊維が豊富な食品としては、きのこや穀類(精製度の低いもの)などが挙げられます。また、食物繊維の中でも、腸内で発酵しやすく腸内細菌が利用しやすい「発酵性食物繊維」を多く含む食材が好ましいとされています。例えば、ごぼう、人参、バナナ、大豆などが該当します。
悪玉菌の活動を助ける食品を食べ過ぎない
腸内環境を健やかに保つには、腸内フローラのバランスが重要です。日々の食事内容は腸内細菌の構成に影響を与えるため、特定の食品を摂り過ぎないことも、腸内環境を意識するうえでの一つのポイントです。
例えば、肉類を食べ過ぎると、悪玉菌が増え、それにより産生される腐敗物質も増えやすくなります。腸の中で悪玉菌が優勢になると、ふだんはおとなしい日和見菌が悪玉菌側に立ち、善玉菌が増えにくい環境になってしまいます。
プロバイオティクスを活用する
経口摂取する(口から摂り入れる)善玉菌を「プロバイオティクス」、経口摂取する善玉菌のエサのことを「プレバイオティクス」といいます。
プロバイオティクスとは、ヒトの体に良い影響を与える生きた微生物やそれを含む食品のことであり、具体的には発酵食品や乳酸菌飲料があります。また、サプリメントや医薬品・医薬部外品(整腸剤)もプロバイオティクスに該当します。食生活の偏りが続いてしまっていて、おなかの具合があまり良くないというときには、整腸剤やサプリメントを試してみるのもおすすめです。
乳酸菌の効果を高める生活スタイルを4つ紹介
ここでは、乳酸菌の効果を高めることが期待できる生活スタイルを4つ紹介します。取り入れやすいものから実践してみてはいかがでしょうか。
バランスの良い食生活を心がける
乳酸菌の効果を期待しておなかの調子を整えたいのなら、まずは食生活全般を見直すことが大切です。食べる量が多過ぎたり少な過ぎたりしていないか、栄養の偏りがないか、食事をする時間が偏っていないか(欠食したり、睡眠の直前に食べたりしていないか)などを振り返って、思い当たることがあれば気を付けるようにしてください。
また、乳酸菌を摂ることを意識しすぎて発酵食品を多く摂り過ぎると、乳酸菌以外の成分として含まれている、脂質や糖質、塩分などを摂り過ぎてしまうこともある点に注意しましょう。適宜、生活スタイルによって、整腸剤やサプリメントを試すこともおすすめします。
適度な運動を行う
適度な運動は乳酸菌などの善玉菌を増やす、という研究報告があります。そればかりでなく、適度な運動は腸に刺激を与え、腸のぜん動運動を促進することで、便通を良くしてくれます。便通の良い状態では、悪玉菌が増殖する機会が減るので、腸内フローラのバランスを整えることにつながります。
十分な睡眠をとる
睡眠不足が腸内フローラのバランスを崩してしまうことを示唆する研究報告があります。腸内フローラのバランスを保つためにも、睡眠習慣も含めて、普段から生活リズムを整えるように心がけましょう。
ストレスを溜めない
ストレスがかかると腸内フローラに影響が及んで、腸内細菌の多様性が低下してしまうこともわかってきました。心配ごとが続いたり、ストレスを感じたときに、おなかの具合が悪くなったという経験がある方も多いのではないでしょうか。
腸は“第二の脳”と呼ばれています。また医学的には「脳腸相関(のうちょうそうかん)」という専門用語もあり、両者の相互関係の研究が進められています。ストレスをできるだけ溜め込まずに元気に過ごすことが、腸の元気にもつながるといえるでしょう。
乳酸菌に関するよくある質問
乳酸菌を摂りすぎるとどうなる?
余分な乳酸菌は便として排泄されます。
しかし、発酵乳製品など乳酸菌を多く含む食品を摂り過ぎると、乳酸菌以外の成分として含まれている、脂質や糖質、塩分などを過剰摂取してしまうことがあります。その結果、肥満や高血圧など体に悪影響が生じる可能性もあるため、適量を摂取するようにしましょう。
乳酸菌を摂っていれば、ほかの善玉菌を摂る必要はない?
必ずしも乳酸菌を摂っていれば、ほかの善玉菌を摂る必要はないというわけではありません。
腸内には約1,000種類の細菌が存在していて、それぞれ異なる役割を持っています。また、善玉菌の中にも腸にとって良い働きをする菌とそうでない菌がいたり、悪玉菌の中にも腸に有用な働きをする菌がいたりすることがわかってきています。
腸内細菌は、それらが産生する物質(乳酸菌の場合は、乳酸)が健康に良い働きをすることがわかっていますが、菌によって産生する代謝物や、その働きは異なります。
つまり、腸内環境を整えるには、乳酸菌だけでなくさまざまな菌をバランス良く摂ることが大切なのです。
忙しくても続けやすい乳酸菌の摂り方はある?
乳酸菌を配合した整腸剤やサプリメントを活用することもおすすめです。
複数の菌を配合したものであれば、より効率良く菌を摂取することができるでしょう。
普段の食事にプラスして活用してみてはいかがでしょうか。
おなかの中の乳酸菌を応援する生活を続けましょう
腸内の善玉菌として、重要な役割を担っている乳酸菌。口から摂取された乳酸菌は、多くは胃酸によって死滅してしまいますが、胃酸に強く生きたまま腸に届くタイプもあります。生きたまま腸に届くと増殖して乳酸を産生し、他の乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌などの善玉菌を増やします。乳酸菌“推し”の生活スタイルで、腸内フローラの維持・改善の手助けをし、自分の健康につなげていきましょう。
- [参考文献]
-
- あさ出版「酪酸菌を増やせば健康・長寿になれる」内藤裕二(著)
- 医事新報2019-3-27「プロバイオティクスとプレバイオティクス」内藤裕二(著)
- 栄養と料理72(6),2006「腸内細菌をととのえよう!腸の善玉菌を増やす方法」
- 秀和システム「発酵の基本と仕組み」,2021
- 辰巳出版「新しい乳酸菌の教科書」,2020
監修医プロフィール
内藤 裕二 先生
京都府立医科大学大学院 医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授/消化器内科学 特任教授/一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長
消化器専門医として最新医学に精通し各地で講演も行っている。消化器病学や消化器内視鏡学、生活習慣病の他、健康長寿や抗加齢医学、腸内フローラや酪酸菌研究も専門としており、「京丹後長寿コホート研究」で腸内フローラ解析に携わっている。酪酸菌と健康長寿の関係などの研究をはじめ、長年腸内細菌を研究し続けている本領域の第一人者。
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